第64章 魔性の女
タオルをみわの口から放すと、既にタオルは唾液を大量に吸って重くなっていた。
「声出せなくて、興奮した?」
「……少し……」
ベッドに入り腕枕をしているが、やはりシングルベッドは狭い。
みわは恥ずかしそうに頷いた。
「……でも、やっぱりいつも通りがいいな」
「そうっスね、オレもみわに名前呼んで貰いたいし」
声を出してはいけないというのはスリリングで、いつバレるか……とそれはそれでまた興奮するのだが、
やはりいつもの愛し合う行為には遠く及ばない気がする。
……いや、刺激的ではあるから、たまにスルなら全然アリ。
「みわ、マネージャーの事もあまり思いつめないでよ」
「うん、ありがとう。正直、長期戦になるかなって思ってる」
「……そうっスねえ……」
「私が引退する時までに、彼女が成長してくれれば嬉しい。
そして、残ったチームをまた強くしてほしい」
「え、そんな長期っスか?!」
「例えば、だけどね」
くすりとそう笑ったみわは、それを完全に冗談とは受け止めていないようだ。
そのくらいの覚悟を持ってやっているということか。
「ずっと1軍見るんスか? つけあがらない?」
「ん~……唯一のマネージャー経験者でもあるし、仕事を覚えてくれるのは一番早いんだよね。
ただ、納得いってないことには積極的にはなれないみたいで……」
「あんまりにもヒドいようなら、監督に相談したらどうスか?」
「……彼女はやっぱり、私が……私たちが変えてあげたい」
海常のチームに変えられたのは、オレも同じだ。
確かに、オレは誰かに言われてとか大人に言われて変わったのではない。
センパイ達の背中を見て、信頼して信頼されて、今がある。
出来ることなら、彼女にもそうなって欲しいのだろう。
「なんか、壮大な計画になりそうっスねえ」
「ふふ、そうだね」
ああ、出すとやっぱり眠い。
更に、この肌を腕の中に抱いているから余計だ。
乾燥機の洗濯物を取り出さなくちゃいけないのに。
「……みわ、愛してる、よ……」
幸せそうに微笑むみわの顔が視界に入ってきて、安心して重くなった瞼を閉じた。