第64章 魔性の女
熱い。
触れ合っている部分から、溶け合っているように。
涼太がまるで、慰めてくれるかのように優しく触れてくれる。
胸の中に抱いていたやるせない気持ちや後悔の念が、さらさらと流れていくよう。
また私は、彼に甘えてしまっている。
甘やかされて、自力で立てなくなってしまったらどうしよう。
強くなりたい優しくなりたいと願うばかりで、結局自分では何もできていない。
いつも、包まれて守って貰っているだけだ。
マクセさんの言葉が頭の中を去来する。
『このままじゃ、必ず黄瀬君の負担になる日が来るよ』
まだ私は、答えを見つけられていない。
答えが見つからないまま、また涼太の腕の中にいる。
「ん……ッあ」
「……みわ、声……ダメっスよ……」
「う、うん……」
そ、そう言われたって……
これでも十分抑えているつもり。
涼太の愛撫が気持ち良すぎる。
全て知り尽くされているような手の動きに、我慢など出来る筈もなく……。
手の甲を必死に噛もうとするが、甘い刺激につい呼吸が浅くなり、口を離して喘いでしまう。
「りょッ、涼太、無理ぃぃ……」
「……オレの肩を噛んで、って言いたいところだけど……今日はみわの顔見たいんスけど……」
涼太は立ち上がって、クロゼットから何かを持ってきた。
「……噛んで」
少し長めで薄いスポーツタオル。
涼太の、匂い。
「ん……」
少し興奮しながら、銜えた。
外れないように後ろで軽く縛られると、まるで猿ぐつわのようだ。
「ん、んん」
中断されてしまった行為を促すかのように、私は涼太にしがみついた。
薄く微笑んだ涼太が、愛撫を再開してくれる。
触れる部分が表現できない程、熱い。
好きで、好きで、仕方ない。
このひとに、愛されていたい。
「ふ……んんッ」
このひとを、ずっと愛していたい。
でも、なんでも持っているあなたと、何も持っていない私。
きっとあなたの隣にいるのは、私じゃ相応しくない。
分かっているけれど、今だけは……この熱に溺れていい?