第64章 魔性の女
最近の自分の変態っぷりには自覚があるつもりだが、それにしても。
そのうち、オレはみわを解剖したくなるのではないかと心配になる。
彼女の指から流れる赤い血を口に含むと、鉄の味がした。
……生きているんだと、安心した。
みわに文句を言われながらシャワールームの外の様子を伺うと、先ほど使用中になっていたシャワールームは既にドアが開放されており、無人だった。
みわを先に部屋に入れ、指の手当てをしてから自分は洗濯物を取りに行こうと、洗濯室へ向かった。
既に停止している洗濯機から洗濯物を取り出し、併設されている乾燥機に放り込む。
……乾くまでにはまだ少し時間がかかりそうだ。
設置されている壁掛け時計を確認すると、既に時刻は0時を軽く過ぎていた。
「やっば……」
こんな事をしていたら、終電がなくなってしまう。
まあ、そうなったらタクシーもあるし、構わないか。
自分が寮生活になり、彼女はお祖母さん宅で補助をしながら生活するようになって、ふたりきりの時間がめっきり減った。
それに加えて、新入生の世話でみわはいつも大変そうだ。
あの彼女、スズサンひとりでも相当面倒だろう。
オレならさっさと辞めさせるか、相手せずに好きにさせてしまうだろうけれど、元来お人好しのみわがそんな事を出来る筈がない。
それに、みわはマネージャーの仕事に誇りを持ってやってくれている。
それをあんな風に言われて、内心穏やかではないだろう。
学校でもクラスが離れ、なかなかゆっくり話をする機会がなかった。
今日は愚痴のひとつでも聞いてあげたい。
……本当なら、少しずつ今後の話もしていきたいな、と思っているのだけど。
回り始めた乾燥機の音を確認してから、洗濯室を出て、すぐ横にある自販機でホットミルクティーを2本購入した。