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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


「ない……!」

練習後の更衣室。

思わず大きな声を出してしまい、周りの子達の視線を集めているのが分かる。

ない。
ない。
どうして?

「どうしたの? みわちゃん」

「キオちゃん、ネ……ネックレスが……ないの……」

今日確かに、練習前にこのポーチに入れたはずだ。

ファスナーを閉めたのだって、ちゃんと覚えてる。

「ネックレス? そこら辺に落ちてない?」

そうだ、ポーチに入れたと思い込んでいたけど、落ちてしまっていたのかもしれない。

「探すよ、一緒に」

「ありがとう……!」

ふたりで床を舐めるように探していると、スズさんから冷ややかな声が降ってきた。

「というか神崎先輩、アクセサリーなんてしてくるからじゃないですか?」

「……大事な、ものなの……!」

涼太が買ってくれた指輪。
大事に、大事にしていたのに。

どうしよう、ない、ないよ。

「もし誰かが拾ってゴミ箱に入れてたら、明日には回収されちゃいますよ」

そうか、落ちているのを誰か捨ててしまったかもしれない。

部室のゴミ箱は、夕方回収が終わって空っぽだ。

「スズさん、ありがとう! カギ閉め、お願いしてもいい……!? お疲れ様!」

ゴミ集積所は校舎の裏……!





「う……そ……」

ゴミ集積所に集められたゴミ袋は、視界に入っているだけで50を優に超えていた。

でも、探すしかない。
もしここにあったら、明日には収集されてしまって、取り返しがつかないことになる。

まずは、ひとつ目。

荒っぽいけど、一旦ひっくり返して全部中身を出した方が確実。

手が汚れようが、構わない。
見つかって……見つかって……お願い!!

鞄も制服も持ってきてある。
何時間だって、探してやるんだ。

絶対に、絶対に見つけるんだ!



ぽつりと、ゴミ袋に水滴が落ちる。
本日の天気予報、晴れのち雨、気温は下り坂。




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