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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


バスケ部の女子更衣室前。

みわにブランケットを返そうと待っているが、一向に出てくる気配がない。

一緒に帰りたいのに。

「黄瀬先輩、お疲れ様です」

あ、何かとみわに噛みついてるコだ。

「お疲れ様っス」

「神崎先輩は中にはいませんが、
何かお預かりしておきましょうか?」

中にはいない?
まだ体育館だろうか。

彼女は嬉しそうに両手を差し出している。

「いや、大丈夫っス。ありがとね」

さらりと断って、体育館へ駆け出した。




体育館の中からは何の音もしない。
でも、電気が消えていない。
きっと中にいるはずだ。

入り口を開けて中を覗き込むと、壁に寄りかかって目を閉じているみわの姿。

一瞬どきりとするが、寝てしまっているだけか。

上履きを脱いで、体育館に入った。
体育館履きがないと、冷たい床のせいで足がひんやり冷えるな。

靴下なのでまるで足音が立たない。
こっそり近づいているみたいだ。

ひたひたと近寄って、みわの顔を覗き込んだ。

「……新入生の相手、疲れたんスね」

ブランケットで肩を包み、そっと唇を重ねた。

「……ん」

「みわ、こんなトコで寝てると風邪引くっスよ」

重そうな瞼がゆっくり開いていく。

「……りょー……た……?」

「ほら、帰ろ」

「あれ、私寝ちゃって……?」

いまだにぽけっと夢うつつ。
くしゅんとクシャミをした。

「立てる?」

「うん」

よろよろと立ち上がる。
膝に乗っていたノートの存在を忘れていたらしく、バサリと床に落ちた。

「……あー……」

今度はのろのろとノートを取ろうとして……
ってもう見てらんねぇっス!

「ほんっとにオフになるとユルユルなんだから……」

ノートを拾ったみわを抱き上げた。

「きゃあ!」

強制お姫様抱っこの刑に処されたみわは、顔を染めてオロオロしている。

「お、降ろして!」

「そんなんじゃ夜が明けても帰れねぇっスよ」

「帰れるよ! 誰かに見られたらどうするの!」

「いいじゃねぇスか、別に今更。
ほら、つかまってないと落ちるっスよ」

「わ、やだ、怖い怖い!」

みわはオレの首に腕を回してギュッと抱き着いてきた。





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