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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第64章 魔性の女


「今日は、1日の流れを掴んでもらえればいいかな……」

そう言って体育館内を歩くみわの後ろには、ゾロゾロと新米マネージャーたち。

まるでカルガモの親子だ。
いや、笑っちゃいけない。

大体皆150㎝台の身長の子が多いので、長身の仲間入りをしているみわは目立つ。

入部届を出した者と、仮入部の者で分かれているらしい。

みわが面倒を見ているのは、本入部者だ。

「ここが、1軍の練習コート」

わぁ、と感嘆のため息が漏れる。
その反応はまるで観光客だ。

……オレ、みわに用があるんスけど……。

「みわ」

「はいはい!
……ごめんね皆、ちょっと待ってね」

彼女はそう言って走ってくる。
ああ、オレが呼べば何を優先してでもオレんとこに来てくれるんスね。

……いや、至極当たり前の事なのだが、なんだか優越感なのだ。

しかし、親ガモがいなくなった子ガモ達のざわめきはハンパない。

「どうしたの?」

「ごめん、こないだの練習でとってくれたデータが欲しいんスけど。オレと中村センパイの分」

「あ、これかな」

ささっと手に持ったファイルから薄いノートを取り出す。

「サンキュ。あとなんか、足に違和感がさ」

「痛い? 見せて」

いつも通り、柔らかいブランケットの上で念入りにオレの身体に触れるみわ。

子ガモからは悲鳴が上がっている。
ああ、最高の気分だ。

そんな子どもみたいな事を本気で考えてしまう。

「ん、ここかな……テーピングよりも少し冷やした方がいいかな。ちょっと待っててね」

そう言って、トタトタと走って行ってしまう。

みわがいなくなり、マネージャー達からの興味の視線が降り注がれる。

……慣れてるけど、こういうのは。

でも、体育館の中で身内から受けるのはいい気はしないっスね……。

マネージャーとはもっと対等でいたいんだ。

「おまたせ、黄瀬くん」

氷のうを当てて、肩には厚手のブランケットをかけてくれる。

このブランケット、ホワイトデーに皆で買ったやつだ。

「冷えちゃうから、かけてて。
ごめんね、上着でもあれば良かったんだけど」

「んーん、サンキュ」

ふんわりとみわの匂いがする。
オレはそのまま足を投げ出して、暫く戦線離脱する事にした。





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