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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


あー……また泣かせてしまった……。
この泣き顔は、胸が痛くなる。

「悲しい?」

「……ううん、大丈夫」

そうは言っているけれど、みわの涙は先ほどからずっとオレの胸を濡らしている。

震える肩をそっと包むようにしていた。

「……みわ、」

「涼太、ありがとう」

「……え?」

「少しの間だったけれど、ここで一緒に過ごす事が出来て……本当に、幸せだった」

「そんな、終わりみたいに言わないでよ」

柔らかい髪をくしゃっと弄ると、みわの香りがふわんと舞った。

みわの涙は……なんていうかきっと、引越しの事だけじゃない気がする。

何か、ずっと抑えていたものが一緒に出てしまったような……。

「みわ、なんでも聞くから、言って」





「涼太……私ね、夢とか……目標とかが……持てないの……」

「……どういう事?」

「自分のこの先の未来の事なんて、考えられない」

以前、少しだけ聞いた。

辛かった過去が、今を生きる力と未来への希望を根こそぎ奪っていったのを。

「そんな、大層な夢なんて誰もが当たり前に持ってるモンじゃないっスよ。
ファンタジー物語じゃないんスから。
これからゆっくり見つけていけばいいんじゃないスか」

そう、焦ることなんかない。
オレたちはまだ若い。

「終わり良ければすべて良し、でしょ」



「……でも、私は幸せにだけはなっちゃいけないの」

それはまるで、呪縛のような一言。

「……前にも言ってたっスよね?
なんでそんな悲しい事言うの?」

「……もうずっとそれを固く誓って生きてきたから、どうしてなのかとか、今さらどうしたらいいのかなんて……分からない」

彼女が自分で考えていることではない。
恐らく長年、植えつけられてきた思想。

植えつけた本人ではないと、この呪縛を解くことは出来ないのか?



「でも……私にだって、やりたい事はある……」

初めて、みわの口から"この先"の事が漏れた。



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