第63章 変化と進歩と計略と
労わるように肌に触れる指が、髪を梳く指が優しくて。
ああ、このまま眠ってしまいそう。
身体がどんどん重みを増して、シーツに沈んでいく。
瞼が重い。
「りょうた……そんなに優しくされると……も、ねむいよ……」
「だめ……まだ寝ないで、みわ」
こんな事言われるのも、初めて。
いつもは眠らせてくれるのに……。
涼太が、胸に顔を埋めてくる。
ちくんと、肌に痛みが走った。
「あッ……」
涼太が噛みつくように、吸いつくように肌に赤い跡をつけていく。
「ん、ん……」
真っ赤な花が散らされると、今度は優しく舌でちろちろと刺激される。
その感覚がなんとも言えず、物凄く興奮してしまう。
「……勃ってる」
涼太が胸の先端にかぶりつくと、もう動かないはずの身体がびくんと跳ねた。
「んあ」
「……イイ反応」
胸への遠慮ない愛撫で、眠気が薄れて、覚醒してくる。
「ま、待ってよ涼太、しんじゃう」
快感ばかりを与えられて、いつか本当に頭がおかしくなってしまうかもしれない。
さらに口を下へ移動させようとする涼太の胸を押し返していると、部屋の隅に段ボールが置いてあるのが見える。
「あ……涼太……もう、引越し……?」
その声に反応して、涼太の動きが止まった。
「うん、寮に空きが出たって……。
3月中に引越し済ませた方がラクって聞いたから」
「寮って……そんなに広いの?
こんな大きなベッド……」
「いや、これは実家に置いておくっス。
実家のベッドを寮では使おうと思って」
「そっか……」
ここでこうして愛し合うのも最後……。
「捨てるわけじゃないっスよ、このベッド」
「うん……」
「……寂しい? 泣かないで……」
ああ、また涙が勝手に……。
なんでだろう、こんなに悲しいのは。
貴重な涼太との繋がりがなくなってしまうような気がして……。
こわい。
ひとりになるのが、こんなにもこわい……。
「ごめんね、みわ」
「ううん……私こそ、めそめそしてごめんなさい」
涼太が優しくキスをしてくれて、それがまた涙の引き金になってしまった。