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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


「そうか、それは……病気か何かで?」

「いえ、それも分からないんです」

どうして自分にはこんなにも記憶がないのか、それ自体が分からない。

何度か大きな病院にも行ったけど、そもそも原因も、いつからなんの記憶がないのかもハッキリしない。

検査では脳に異常は見られなかった。
お手上げだ。

「嫌な記憶だけが……という訳でもないんだな」

「そうですね……幼少期の家族に関する記憶は皆無です」

記憶があるのは、中学生からだ。
あの地獄の日々。
あれこそ、スッキリ忘れてしまいたいのに。

気付けば、爪が食い込むほど手を強く握ってしまっており、チクリという痛みを感じ、慌てて手を緩めた。



暫くの沈黙。



「……渋滞、酷いな」

ぽつりとマクセさんが漏らした。
確かに、先程から車は殆ど進んでいない。

電光掲示板を見ると、どうやら事故が発生してしまったようだ。

今更高速を降りる事も出来ず、暫く無言が続いた。

「……頼るな、という訳じゃない」

「……はい?」

「黄瀬君に頼る事が悪い事なんじゃない。
キミの欠点は、全て自分の犠牲の上に成り立たせてしまう事だ」

犠牲の……上に……?

「誰かの為に強くなりたいと思うのは正しい。
でもそれには、自分を犠牲にするべきではない。
勿論、そういう選択をしなければならない場面も長い人生の中ではあるだろう。
でも、それは最善ではないよ」

「……」

「ああ、また遠回しに言うのは悪い癖だな。
簡単に言えば人と自分、両方大事にしながら生きなさいと言うことだよ」

また。
またか。

「……自分を大事にしろと色々な方に言われるのですが、それが全く分からなくて……。
今、それでも悩んでいました」

「それなら、自分を何より大事に思ってくれている人物に聞いてみればいいじゃないか」

……誰?

「待ってるんだろう? 今日もキミの帰りを」

狙ったかのように、スマートフォンがメールを受信した。

涼太だ。

「流石に嗅覚が鋭いね、キミの番犬は」




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