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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


合宿4泊目。

マクセさんの質問に、やはり答えは見つけられない。

きっと、夢や目標を持てということなんだろう。
それはわかる。

でもそんなもの、持てた試しがないのに突然言われても……。

不安な気持ちが拭いきれないまま、レストランでの夕食をとっていた。



最後の一口を口に運んだ時、元気な声が響く。

「神崎ちゃん! こっちにおいでよ!」

選手の皆さんが呼んでくれている。
4人がけのテーブルに、3人で食事をしているようだ。

「は、はいっ!」

私は慌てて飲み物を持って席を移動し、バスケについての話を聞かせて貰った。

少し気が紛れる。

考えなければならないのは分かっているけれど、脳みそは悲鳴をあげていた。

「月バス見たよ。海常全国4位なんて、大したものじゃん!」

「ありがとうございます!」

「凄い選手が入ったんだよね。黄瀬クンだっけ? ポイントガードの笠松クンもいい選手だったよね」

「はい、3年生が抜けてしまったので、今は新チームをどう育てるかという事に重点を置いています」

「選手が混じる事はあるけど、こんな風にマネージャーだけが合宿に来るのなんて初めての事だよ。期待、されてるんだね」

期待……
されているんだろうか……。

「あ、神崎ちゃん飲み物ないじゃん。頼んであげるよ」

「あ、す、スミマセン」

追加のオーダーって、別にお金かからないのかな。

合宿にお邪魔させて貰っている身としては、贅沢はしたくないんだけど……。

「女子高生って普段何して遊ぶの?」

「……すみません、普段は部活と勉強ばかりで……特には……」

残念ながら、彼らが期待している"女子高生"とは程遠いのだ。

「そうかー、いいね、青春だね。今しか出来ない事だからね、やれるだけやるといいよ」

「カレシとかいないの?」

「あ……一応、います」

「へえー! イケメン? あ、飲み物きた」

オレンジ色の液体が入ったグラスだ。
底の方が少し紫色になっている。

「ありがとうございます。……ミックスジュースですか?」

「カシスオレンジって言ってね、オレンジジュースにカシスが混ざってるんだよ」

「頂きます」

口にすると、今まで飲んだ事のない味がした。

オレンジジュースに、カシスの香りが混じっている。

美味しい。


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