第63章 変化と進歩と計略と
合宿3泊目。
神崎みわと今日も部屋で様々なレクチャーをしているが、昨日の俺の質問に答えが出た様子はない。
何がそんなにこの子を縛っているんだろう。
そんなに難しい事を聞いたか?
まあ、簡単に言えば目標……夢を持てという事だったのだが。
いつも、自分の説明は遠回しになってしまっていけない。
「あーもしもし源ちゃん?
……ああ、それは問題ないよ。
でも、あの子に夢を見つけさせるのはなかなか難しいかもしれないな。
……まあ、源ちゃんの頼みだ。
できるだけ頑張るよ。ああ、またな」
旧友の頼みで、マネージャーを育て上げるという役を請け負った。
まあ、軽い気持ちだ。
自分達の世界に素晴らしいトレーナーが増えるというのなら、それに越したことはないし。
神崎みわは素晴らしい才能を持っていると思う。
カタチは違えど、黄瀬涼太と同等の希少種だろう。
それなのに、あの自信のなさはなんだ?
あの自己評価の低さと自己犠牲の精神が、結果的に彼女自身の可能性を狭めている。
もう少し、何がしかに自信を持っていて良さそうなものだが。
聡明で……美しい。
万人が喜ぶ美人というわけではないが、思わず目を引く透明感。
伏せ目がちな表情は、まるで男を誘っているようだ。
黄瀬涼太はあれにメロメロになってるわけか。
脱線した妄想の軌道を戻して、考え込む。
あの黄瀬涼太の彼女。
成績は学校で一番。
敏腕マネージャーとして期待が高い。
何より勤勉で一生懸命だ。
ますます、自信がないなんて信じられないような話だ。
……俺が若くて同じクラスにいたら、惚れていたかもしれないな。
なんとか彼女が成長する手助けをしてやりたい。
そう思い始めるようになっていた。