第63章 変化と進歩と計略と
フラフラと覚束ない足取りで部屋に戻ると、洗面所の手前でへなへなと座り込んでしまった。
私が、涼太の負担になる。
わたし、に
未来なんかない。
だって……
突然酸っぱいものがこみ上げてきて、トイレに駆け込み、吐いた。
「う……」
言葉にならない言葉の代わりに、ひたすら吐き出した。
脂汗と涙でぐしゃぐしゃになりながら、何故吐いているのかも分からないままに、胃の内容物がなくなるまで吐き続けた。
「げほっ、げほ、ぅ……」
涼太の側で力になりたい。
それは、私では叶わない事なの……?
トイレットペーパーで顔を拭い、水を流して立ち上がると、目眩がする。
水道で歯を磨いていると、土気色になっている顔を鏡の中で見つけ、咄嗟に目を逸らした。
考えなきゃいけないのに、考えれば考えるほど頭が真っ白になっていく。
こんな事、初めてだ。
……いつから私は、自分の未来が真っ黒になったんだろう。
ヤツに犯される毎日になってからか。
あのおぞましい感触が背筋を走り、また吐きそうになるのをなんとか堪えた。
過去を消さないと未来が見えないの?
あれがなければ、今私は未来を見据えて頑張っていられた?
考えても考えても、どうしたらいいのか分からない。
消したい。
汚れた過去を、汚された過去を全部。
スマートフォンが着信を知らせる。
涼太の名前が表示されているのに、私は出ることが出来ない。
今声を聞いたら、助けを求めてしまいそうで。
だめだ。
これは私自身の問題だから。
私が、強くなるために必要なこと。