第63章 変化と進歩と計略と
合宿は、刺激的過ぎる。
まずは、高校とは比べ物にならない程の設備の充実。
選手達はそれぞれ、ウエイトトレーニングを終えてから体育館に入る。
私は朝はトレーニングルームに居て、実際に選手は何のためにどこを鍛え、どのようなプランを立てているのかを教わる。
その後はすぐ調理室を見学し、身体を作る為の食事について学ぶ。
午後からは体育館で、練習メニューの正しい組み方を教わる。
実際の練習を見ながら、選手の特性と練習内容の特徴を掴んで。
海常で活かせる事があるようなものは、全て吸収して帰るんだ。
皆のために、強くなるんだ。
夕方からは、各選手へ疑問点をぶつける自由が与えられた。
「おっ、女子高生からインタビューを受けるとは、いいねえ」
最初は皆こんな感じでマトモに取り合ってくれるか心配だったけれど、話が始まれば皆、真剣に聞いてくれた。
「バスケで世界を狙うなら、高校生の時点で日本にいるという事がもう既に出遅れている」
という意見があった。
世界。
NBA。
涼太の……目標は?
2泊目の今夜も、就寝前にマクセさんの部屋で様々な事を教わっていた。
「……ところでみわちゃん、選手に睡眠は必要だと思うかい?」
今まで話していたフォーメーションの話とは全く違うその単語に一瞬止まったものの、すぐに頭を切り替えた。
「はい、必要不可欠だと思います」
「そうだね。俺もそう思う。
今日のみわちゃんの睡眠時間は?」
「……えっと、3時間ですが……」
「マネージャーは選手とは違うのかい?」
質問の意図が掴めなかった。
「……はい、選手は選手自身が輝くもの。
マネージャーはそれを輝かせるもの、だと思います……が……?」
マクセさんはアッハッハと笑った。
「ごめんごめん、遠回しだったな。
キミはマネージャーとして、自分自身もしっかり管理するべきだよ」
「私自身、ですか? こう見えても一応体調管理には気を付けているつもりですが……」
「それで睡眠は3時間か」
「何か問題があります……でしょうか?」
だって、今自分が頑張らなければ、絶対に皆の役に立つ事なんて出来ない。
多少無理してでも、私は頑張るべきなんだ。
それは、十分に承知しているつもりなんだけど……。
マクセさんが何を言いたいのかが分からない。