第63章 変化と進歩と計略と
通話を終了させて、ふうと一息ついた。
涼太、疲れてたのかな。
電話して悪いことしちゃった。
まだ21時だと思って、彼の都合も考えずに電話をしてしまった。
きっと、合宿帰りで疲れていたんだろう。
ちゃんとご飯を食べてお風呂に入ったんだろうか?
……でも、少しでも声が聞けて良かった。
微かに聞こえた彼の寝息が、熱く耳に残っている。
「……ノート、まとめよう」
スマートフォンをベッドへ置き、ノートを出していると、ドアをノックする音が聞こえた。
こんな時間に、誰だろう?
「……はい」
「俺だけど」
「あ、マクセさん、お疲れ様です」
ドアを開けると、既に部屋着に着替えたマクセさんが立っていた。
「これから俺の部屋に来て貰ってもいいかな」
「え……これから、ですか?」
思わず警戒する。
どうしてわざわざ部屋に……。
「ああ、それは女性として正しい防衛反応だ。
だが俺はガキの貧相な身体には興味ない。
はい、筆記用具を持って」
「……は、はい……」
ガキって。
そんな言い方酷い……。
確かに、ガキだけど……。
渋々、スマートフォンと筆記用具を持って部屋を出た。
マクセさんの部屋は、私の部屋と同じ作りだった。
真ん中にベッドがひとつ置いてある、シングルルーム。
彼は備え付けのテレビの前にあるDVDデッキにディスクを入れた。
「はい、ここに座って」
「えっと……これは……?」
画面には体育館が映し出された。
「キミがトレーニングルームに籠っている間の体育館での練習だ」
「え……ッ!」
凄い……!
「今から出来得る限り、キミに叩き込もうと思う。もう疲れて寝たいならオススメはしない。どうかな」
「よろしくお願いします!」
「また即答か」
マクセさんはくすくすと笑っていた。
だって、嬉しいんだ。
知らないことをどんどん吸収出来る。
新しい事をどんどん知る事が出来る。
それが、楽しくて楽しくて、たまらない。
「まずはこの練習。キミから見て、海常での練習との違いはなんだ?」
「……えっと……これは……」
最高の合宿が、始まった。