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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


「黄瀬君、おはよう!」

「……おはよっス」

マネージャーの吹っ切れたような笑顔。
なんとなく、目を合わせることが出来ない。

目が覚めても胸焼けは残ったままだった。

「黄瀬君ごめんね、昨日……」

「オレ、何も見てねーから」

そう。オレには関係のない事だ。

自分が振った女のコがショックで誰に慰めて貰おうと、オレには関係のない事。

罪悪感など、感じる必要はない。




今日は夕方まで練習に参加したが、昨日のような感覚になることは出来なかった。

非常に短かった3日間、オレたちはそれぞれ様々な得難いものを得て、帰路に着いた。





「ただいま……っと……」

みわはもうこの家には帰って来ないんだった。

ガランとしたみわの部屋を見てから、ため息ひとつついてリビングに向かう。

適当に冷蔵庫にある物で夕飯を作った。

会話もなく、ひとりで黙々と食べた。
食後のお茶は、淹れなかった。

静かなキッチンでひとり、皿洗いをした。

コタツは電源すら入れていない。

ひとりで風呂に入って、ひとりでベッドに入る。

ひとり暮らしなんだから、当たり前だ。

むしろ、誰にも干渉されずに過ごせて、オレの性格的には合っている。

今までなら、人との煩わしい関わりから解放されて、何よりも好きな空間だった筈だ。

そう、自分に合っているはず、なのに。



彼女がいるのが当たり前になっていた。

コートではオレの後ろに。

家ではオレの隣に。

ベッドではオレの腕の中に。



会いたい。
声が聞きたい。



そんなオレの言葉が届いたかのように、スマートフォンが着信を知らせてくれた。

「みわ?」

『あっ涼太、おつかれさまあ』

「好きだよ」

『……へっ!?』

「会いたい」

『ど、どうしたの』

「どうもしないよ。みわ、声、聞かせて」

『え、あ、うん、今日はね、トレーニングを中心に見学させて貰ってね、そのあと……』


ああ、気持ちのいい声。
聞いているだけで、蕩けそうだ。


『……涼太? 寝ちゃった?』


甘く囁くような声。
大好きだ。


『……おつかれさま。お休みなさい』


気付けばオレは夢の中だった。


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