第63章 変化と進歩と計略と
陰鬱な気持ちで廊下を歩いていた。
なんで、他人の過去話程度であんなに嫌な気持ちになったんだ。
お得意のあーそうなんスか、でいいじゃないか。
どんな過去だろうが、オレには関係ない話だ。
自分だって、みわと好き放題ヤッてるじゃないか。
年末年始なんて、何回抱いた?
……避妊しているとはいえ、100%ではない以上、さっきの彼女とやってる事は同じだ。
なのに、ジリジリと焦げ付くような焦燥感と嫌悪感に支配されていた。
自販機で何か冷たい物を買って帰ろう。
胸焼けがする。
確か、玄関近くにもひっそりと自販機コーナーがあった筈。
気分を変えたくて、玄関近くまで戻る事にした。
玄関はフロント以外消灯されており、自販機コーナーの明かりだけがぼうっと浮かび上がっていた。
先ほどの騒がしい空気から解放され、ホッとした。
何を飲もうか。
ぼんやり考えながらコーナーに足を踏み入れると、人の気配がした。
「はぁ、はぁ……」
ん?
下にばかり向けていた視線を上げると、金髪の大学生チームの選手が、浴衣の前を開けて……腰を振っていた。
あ、お邪魔したかと去ろうとして、何気なく相手の女を見た。
うちのマネージャーだった。
「ハァ……お、噂をすれば」
「はぁ、はぁ……え……?」
彼女が着ていたであろう浴衣は捲り上げられ腰の部分しか残っておらず、胸も下半身も丸出しの格好で、後ろから貫かれている。
「愛しの黄瀬涼太クンだよ」
目が合った。
昨日突然告白してきた彼女。
「あっ……き、黄瀬、君」
彼女はパンパンと腰を打ち付けられ、身体を揺らしながらこちらを向いた。
「何……してんスか」
オレもさっさと去ればいいものの、予想外の事態に頭が混乱していた。
「この子、黄瀬君がね、好きなんだって」
「やっ、あ、見ないでっ」
涙を流しながら恍惚の表情を浮かべる彼女は別人だ。
「でも……っ、片思いで……断られて……寂しくて、泣いてたからつい、ね……っ」
「あ、あ……ん……!」
「イイよ……ッ、で、出るッ!」
「あァ……ッ!」
男がフィニッシュを迎えたところで、踵を返して歩き出した。
なんなんだよ。
どいつもこいつも。
誰か助けてくれよ。
オレとみわを捕らえる"性"の闇から、解放してくれ。