第63章 変化と進歩と計略と
「あ、黄瀬涼太君みっけ!」
みわとの通話を終え中庭から旅館へ戻ると、大学生チームのマネージャーを務めている女の人がこちらへ向かってきた。
「探してたんだよー! オネーサン達とあそぼ」
うっ。
そうきたか。
「オレ、明日も早いんで……」
「なぁに言ってんの! 皆一緒だって!」
そう言われたらぐうの音も出ない。
はぁと小さくため息をついた。
これもお付き合いか。
「じゃあ、30分だけ……」
「やった!」
オネーサンは無遠慮に腕を組み、オレを連行して行った。
「黄瀬君連れてきたよー!」
きゃあきゃあと盛り上がる室内。
……こんなにいたのか、女性。
「いやーホントにカッコいいねー! 彼女いるの?」
「いるっスよ」
「だよねー! よりどりみどりでしょう! 彼女いっぱいいそう!」
「いや、オレそういうのないんで、ひとりっス」
きゃーと更に盛り上がる場内。
「やだー一途とか、可愛すぎるー!!」
「写真ないの? 写真!」
ふと言われて気がついた。
写真……ない。
あるのは集合写真くらいか。
そもそもみわは写真を撮られるのが大嫌いで、何かとシャッターを押す役をしたがる。
この間の香水の広告だって、ハッキリ顔が出るものだったら絶対に頷かなかっただろう。
写真、欲しいな。
いつでも見れるように。
あ、最中のも欲しい。
オカズに出来る……とか言ったら殴られるか。
「いいなー高校生のお付き合い!
しがらみもなくて、ヤリまくりでさー!」
……酒臭い。どうやらオネーサン達はだいぶ酒が入ってるらしい。
ひどい出来上がり方だ。
「アタシも、当時ナマでヤッてたらデキちゃってさー、あん時は焦ったわー」
「……それで、どうしたんスか?」
「え? 勿論堕ろしたよー高校生だもん。無理っしょ」
「でもワタシ、黄瀬君との子どもならアリだなぁ、なんて!」
……胸糞悪くなる話になってしまった。
生命を、なんだと思ってんだ。
「オレ、そろそろ戻るっス」
「ええー、待ってよ黄瀬君」
「オネーサン達といい事しよー?」
「あんたそれ、セクハラだってー!」
アッハッハと、品も何もあったもんじゃない。
振り向きもせず、部屋を去った。