第63章 変化と進歩と計略と
合宿2日目。
今日は、試合形式がメインの練習だった。
相手チームは『黄瀬涼太封じ』のスタイルをとった戦法で攻めてきた。
トーゼン、高校バスケでもキセキの世代であるオレを封じようというのは、まず間違いなく相手チームがとる、最も真っ当な戦法である。
それはオレがいる以上、チームとして絶対に越えなければならない壁なんだ。
チームとしてのレベルも、個人としてのレベルも高い大学生チームとの対戦に、パーフェクトコピーを駆使しながらもオレたちは苦戦した。
でも、そんな中でも一瞬、ほんの一瞬だけいつもと違う、研ぎ澄まされた感覚になり……。
オレは、確実に『ゾーン』に近付いた手応えを感じた。
ゾーンに入るには、トリガーとなるものが必要だという。
あと一歩、何かが足りないんだ。
夏までに、それを掴めるか。
でも、今日ここで得た感覚は絶対にこの先活きる。
こんなまたとないチャンスを貰えた事に、心底感謝していた。
新しいチームのぎこちなさも、だいぶ和らいできた。
マネージャーも今日はやる気だ。
ああ、バスケが最高に楽しい。
『ほんと!?』
今日のゾーン一歩手前の話をすると、みわは自分の事のように喜んでくれた。
「バッチリ収穫アリっスよ。明日、帰るからね」
『会いたかったなあ。私はね、明日の朝出発だから……まだ暫く、会えないね』
「そっか……」
オレたちは2泊だが、みわの参加する合宿は4泊だ。
相手はオトナ……。
みわは、そんな男達に囲まれて、オレのことをやっぱりガキだなと思うだろうか。
そんなどうしようもないことが時々怖くなる。
「みわ、何かあったらすぐ連絡して。
あとは気に食わねーけど……問題があったらマクセサンにも頼るんスよ」
「ふふ、珍しいね」
みわの一番近くに居られる大人は彼しかいない。
あー、心配……。
『お風呂はもう、入ったの?』
「ん、入ったっスよ。あとはストレッチして寝るだけ」
『冷やさないようにね!』
「ハイハイ」
いつものやり取りに癒された。