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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


「黄瀬君!」

大浴場を出て廊下を歩いていると、同じく風呂上がりらしいマネージャーに声をかけられた。

「おー、お疲れ様っス。
よかったね、部屋ちゃんと直ってて」

宿に戻る頃には、朝壊れていた設備もちゃんと直っていた。

「あ、うん」

「ん? 何か用事?」

「黄瀬君……ちょっといいかな」





彼女に誘われ、熱い温泉で火照った肌を冷やそうと、浴衣姿のまま旅館の中庭の椅子に腰掛けた。

もう4月もすぐそことはいえ、夜は冷え込む。

あまり冷やすと、みわに叱られるな。


「なんスか?」

「あのね……今日、ありがとう。
あんな風にみっともなく取り乱して……ごめんなさい」

彼女は俯いたまま、そう言った。
律儀な子だな。

「ああ、いいんスよ気にしなくて。戻ってこれて良かった」

「うん、それは……なんとか」

「慣れなくてしんどいかもだけど、明日もがんばろーね」

冷える前に部屋に戻ろうと、腰を浮かせた。



「あの……黄瀬君」

「うん?」

まだ何か話があったのか。

マネージャーの仕事については、みわから聞いている程度の知識しかないし、適切にアドバイス出来るかが怪しいけど…。




「…………好き、です」

「……え?」


待て。
どうしてそういう流れになった。


「みわちゃんと付き合ってるのも、知ってる……。でも、ずっと好きで……好きなの……」

「そっスか……ありがとう」

みわと付き合ってるのを知っているというんだから、もうこれしか言えることは無いだろう。

無駄な情をかけるつもりもない。


「わたしじゃ……だめですか」

「ごめんね」


即答すると、ピクリと肩が跳ねた。


「い、いいの……気持ち、伝えたかった……だけだから……」

彼女は震える声でそう言うと、走り去ってしまった。



「オレ……バスケしに来てるんだから、勘弁してよ……」

つい巻き込まれた重苦しい空気に、ため息が止まらなかった。


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