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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第63章 変化と進歩と計略と


「みわはいつも言ってるんスよ。
"いきなり出来るわけじゃないし、いきなり強くなれるわけでもない。こういうのは繰り返す日々から身についていくものなんだ"って」

好きな曲の歌詞だけどって笑ってたけど、彼女はそれを実行して全て身につけてる。

「黄瀬君……」



「何にもしないうちから、甘ったれてんじゃねーよ」



凍りつくその場の空気。
ヤバい。

言ってしまった。

笠松センパイが乗りうつったんだろうか。
(こんな事言ってたらシバかれるっスね)

オレらしくもない……。


あー、もうこれでこの子は辞めちゃうかななんて思ったが、彼女はごしごしと目を擦り、すくっと立ち上がった。

「ごめんね、黄瀬君。ありがとう!」

オレが渡したペットボトルを持って、体育館へ走って行った。

……ま、みわが大丈夫って見込んだコなんだから、大丈夫か。

「やべ、オレも戻んねーと」

体育館に戻ると、先ほどの監督とマネージャーが何やら話をしている。

その後、皆と同じように練習に参加していたので話は通ったのだろう。

とりあえず、一安心っスかね。






「あー!! 生き返るっスー!!」

熱めの湯が張った浴槽に浸かり、ついつい声を漏らした。
いやむしろ叫んだ。

疲れ切った身体がじわじわとほぐれていくようだ。

じい……っと自分の身体を見下ろす。

身長も、体重も青峰っちくらいは欲しい。
欲を言えば身長はもっと欲しいけど……。

大胸筋に6つに割れた腹筋。
見慣れた身体ではあるが、やはり物足りない。

圧倒的に肉体の仕上がりが違う。
まず第一に感じた事だった。

それに、ひとりひとりの選手のプレーの質。

そりゃあ、サークルとは違って遊び半分の人間はいないし、皆高校からそれなりの成績を残してきた人間ばかりだろう。

たった数年……

…………考えないようにしていた後悔の念がまた湧き上がってきた。

なぜ、もっと早くバスケを始めてなかったんだろう。

中2でバスケを始めたオレは、常にこの思いに付きまとわれた。



悔やんだって仕方ない。
過去には戻れないんだから。



これから、間違えなければいい。
バスケも、大切なヒトの事も。

バシャンと熱いお湯を顔にかけて、揺れそうになる気持ちを振り払った。


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