第63章 変化と進歩と計略と
そこから体育館に移動して練習に参加するわけだけど……。
とにかく、新しい発見ばかりだった。
まず、高校生と大学生では、身体の仕上がりが全く違う。
プレーをしていても当たりの重さが高校生のそれとは全く異なるし、なんつーか、紫原っち並みの肉体がチームにいっぱい居るみたいだ。
少し接触プレーになっただけでも、ゴリゴリ体力を削られてしまう。
「なるほど……これは、キツイっスね……」
なんとかかんとか練習についていっていると、大学生チームの監督の怒号が飛んだ。
「キミ! やる気ないんなら、邪魔だ! いらん! もう帰れ!」
おお、コワイコワイ。
ま、うちのカントクだって怒ったらあんなもんか。
どの選手が怒られたのかとサラッと目を走らせると、うちのマネージャーが泣きながら走り去って行くのが見えた。
……もしや、怒られたのは彼女だったか?
まあ、申し訳ないが構っている余裕はない。
この練習の後の休憩で様子を見てくるか。
水飲み場で蹲っている小さな影。
「……練習、戻んなくていいんスか」
外の自販機で売っていたペットボトルを、コツンと首元に当てた。
驚いたように顔を上げた彼女は、涙で顔が崩れ、目も鼻も真っ赤だった。
「わたし、なんか……居ても役に立たないから……! わたしは、みわちゃんとは違う! みわちゃんみたいに何でも出来るわけじゃないよ……」
「……」
「あの監督さんだって、ロクにわたしの事を見てくれもしないで、ああやって怒鳴り散らして。もっとちゃんと見てくれれば、わたしだって……!」
落ち込んでいる彼女に、優しい声をかけてあげなくてはならない。
それは分かっているのだが、どうにも抑えきれない。
「……みわだって、最初からなんでも出来たわけじゃねぇっスよ」
「……え?」
「ルール覚える所から始めて、毎日少しずつ仕事覚えて。でも、加減がわからなくて夏合宿では熱中症でぶっ倒れて」
「みわちゃんが……」
「皆の記録をノートに取るのだって、誰に頼まれて始めたわけじゃない。あの子は、努力の天才なんスよ」
「……でも、だって……」
「みわは、自分の出来る事をしない内から他人の悪口を言うような人間じゃない」