第63章 変化と進歩と計略と
「……狭い、っスね……」
8人乗りのミニバン。
普通の高校生が乗る分には、特に不自由しないだろう。
しかし……
いかんせんこのメンツでは、狭すぎる。
まず、運転席はカントク。
助手席は早川センパイ。
2列目には中村センパイと、2年生のセンパイ2人。
最後列には、2年生のセンパイ、オレ、マネージャーである。
女の子ならともかく、180だ190だという大男がゴロゴロ乗っている。
……マイクロバスの方が良かったっス〜……なんちゃって……。
贅沢言ったら叱られそうだ。
まあ、頭が天井についたまま首が一切動かせない、という状況じゃないだけマシだろう。
頭上は思ったよりも余裕がある。
……バックウィンドウは何にも見えないだろうけど……。
「き、黄瀬君……狭くて、ごめんね」
「ああ、大丈夫っスよ」
さっきからマネージャーとも完全密着状態。
右はゴツゴツしたセンパイに、左は小柄な女のコ。
なんだかそのアンバランスさが可笑しいけど、まあ……埼玉までだというから耐えるしかあるまい。
しかし……なんか強い香水のニオイがする。
状況的にマネージャーか?
こんな密室状態で勘弁して欲しい……。
香りって、エチケットっスからねえ。
一方的に嗅がされる方の身にもなって欲しい。
自分で楽しむ分にはケッコーだけど、人まで不快にさせてはならない。
香水なんてつけなくても、そこにいるだけでふわりと鼻を擽るようなみわの香りを思い出し、早くも恋しくなっていた。
みわも一緒だったら良かったのに。
そんな不満を抱えつつも、今日から2泊。
未知の経験に、オレはウキウキしていた。