第62章 卒業
「ごちそうさまでした。そろそろお暇するっス。
遅くまでお邪魔してしまってスミマセン」
オレは立ち上がって、コートを探す。
「あら、みわの部屋に行かなくていいの?」
「……へ?」
みわの部屋?
「1階の私の部屋でいつまでも一緒じゃ可哀想だし、以前の部屋はもう使えないから……2階のお部屋をね、掃除したの。見て行ったらどう?」
?
何か見なければならないものがあるのか?
「あ、えっと……?」
「おばあちゃん、何か面白いものあったっけ? おじいちゃんの部屋だったところだよね?」
「そうよ。
私はもう今日は2階に行く用事はないし、お茶も持って行かないから、ごゆっくりね」
お祖母さんはそう言ってにっこりと微笑んだ。
ちょ
……あー、つまり、そーゆーことっスか……
なんだか、お膳立てされると凄く恥ずかしくなる。
「……じゃあ、よく分からないけど私の部屋見てくるね。いこう、涼太」
「あ、……ウン」
みわが気付いている様子はない。
お祖母さんと目が合って、深々と頭を下げた。
みわが部屋の電気を点ける。
ほんのり古い畳の香りがした。
「懐かしいなあ、おじいちゃんの部屋!」
お祖父さん、スミマセン。
お邪魔シマス。
心の中でそう謝って、足を踏み入れた。
8畳ほどの、広めの部屋だ。
テーブルや布団、姿見などはあるが、その他には特に物がなく、殺風景な印象だった。
あ、あとは部屋の隅にある本棚。
これは年季が入っていそうだ。
お祖父さんの愛読書でもしまってあるのだろうか。
「おばあちゃん、何見て欲しかったんだろう?」
みわがキョロキョロしている。
「あのね……みわ……そうじゃねぇんスよ……」
「ん?」
「言いにくいけど……イチャつくならどうぞごゆっくり、って事っスわ……」
「……は?」
みわは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
そうして暫くした後に……
「え、ええ!?」
と、顔を赤くして反応した。
「オレたちの事応援してくれんのは嬉しいけど……流石に恥ずかしいっス」
なんだか気まずい空気が漂っていた。