第62章 卒業
「香水、香り嗅いでもいい?」
「いいっスよ」
オーロラのような、海のようなデザインの箱を開けて水色のボトルを取り出すと、フタを開けてくん、と匂いを嗅いだ。
愛や恋と言う割には、よくあるベタベタに甘い香りではない。
甘さの中に爽やかさがあるような、
強さの中に優しさがあるような、そんな香り。
「……いい香り」
「どれどれ」
涼太は香水のボトルを私の手から受け取ると、ふたりの上の空間にシュッと吹きかけた。
「香水は直接肌につけるんじゃなくて、こうして空間に吹き付けてからくぐるようにするといいっスよ」
「そうなんだ」
柔らかな香りが私達を包む。
「……なんつーか、興奮する匂いっスね」
「え?」
涼太が私の胸に顔を寄せてきた。
既に胸元は彼が散らした紅い花だらけになっている。
「待っ」
跡だらけのそこを隙間なく埋め尽くすように、更に強く吸い付いてきた。
「ぁ……っ」
まるで、彼に食べられているような錯覚。
胸元にかぶりつくように吸い付く姿が、赤ん坊のようにも見える。
愛撫をされているわけではないのに、興奮して息が乱れてしまう。
ずくずくと襲い来る下半身の疼きに耐え切れず涼太の髪に指を差し入れると、サラリとした柔らかい絹のような感触に、余計に欲情し、煽られた。
「や……は、はぁ……っ」
「……みわも、興奮するっスか?」
「あ、ぁ……」
「ほら腰、動いてる」
全く自覚はなかったのに、彼に言われてみると、確かに自分から挿入を誘うように腰を揺らしていた。
止めたいのに、止められない。
「や、だ……なんで、私……ッ」
「いいっスよ……素直なみわ、ダイスキ」
捕食されるかのように唇にかぶりつかれ、性急に入り込んでくる舌に、呼吸が止まりそうになる。
「んう……ぁ」
太腿に、彼の熱く滾った塊の感触を感じる。
欲しい。
欲しい。
理性の飛んだ頭で、挿入される彼を受け入れた。
「あ……ぁあ……ッ!」
熱く膨れ上がった楔に貫かれる快感。
押しては返す波の様な快楽に肉体を委ね、喘ぎ、涼太を自分の一番深い所で受け止めた。
交わり合う私達の横には、蓋の開いた香水の瓶。
ふたりの香りが混ざり合う頃には、
繋がった身体も完全に溶け合っていた。