第62章 卒業
うちのテレビは、少し蛍光灯が反射してしまう部分があるので、映画などを観る時は基本的に電気を暗くしている。
まあ、映画館みたいで雰囲気があっていいよねって事で、あまり気にした事はないけど。
それにしてもあきサンのDVD。
……なんとなく……なんとなく……
あのヒトなら……っていう予感がある。
みわは多分、全く気付いていない。
みわと並んでコタツに足を入れ、ソファへ寄りかかって観る体勢になった。
みわがぽちりと再生ボタンを押し、画面が黒くなった。
そして、よくある映画会社のロゴなどではなく、得体の知れない会社ロゴが表示される。
……これはやっぱり……
驚くほど簡素に表示されるタイトル。
おまけに筆記体で書かれている上にすぐ消えた。
「……ん? なんか、人の名前っぽかったけど……涼太、見えた?」
「あーいや……見えなかったっスね……」
多分それは女優さんの名前ではないかと。
そしてシーンは突然女の子の部屋。
若い恋人同士がソファでお喋りしている。
うん。これは。
どう見ても女性向けのAVっスね。
オレも女性向けって観た事ないから正直興味はあるけど……。
みわは全く気付く様子がない。
そりゃそうだ。
あきサン!
唐突すぎるんスけど!?
仕事がどうのこうのと一言二言話してから、笑い合いながら男優達は突然キスを始めた。
みわは突然の展開に固まっている。
そして顔が赤くなっている。
普通のストーリーがある映画のラブシーンですら照れながら観るような子だ。
この後、大丈夫だろうか…。
「涼太、私……全然ストーリーを把握出来てないんだけど……」
「あー、うん」
残念ながら、ないんだって。普通の映画のようなストーリーは。
パッと画面が切り替わり、次のシーンでは男優が女優を押し倒していた。
「えっ?」
思わずみわから驚きの声が漏れた。
ヤバい……ちょっとこの状況、楽しくなってきた。
オレは画面よりもみわの方をずっと見ている。
AVなんかよりもずっと楽しい。