第62章 卒業
「合宿にも持って行こう……」
「もう来週か。合宿、楽しみっスね」
そういえば、涼太たちはまだ知らないかもしれない。
「あのね、涼太。実は……」
「ええッ! マジっスか!?」
「そうみたいなの。だから、暫くは会えないね」
「みわがいない合宿って初めてっスね」
「慣れない子だから、サポートしてあげてね。お願い」
付き添うのは、夏が終わってからマネージャーになってくれた子だ。
不慣れながらも、自分で様々な工夫をして仕事や皆の事を覚えようとしてくれている。
現時点では、合宿についていける……自分である程度判断できるレベルなのは彼女以外には考えられない。
「うん、それはモチロンするっスけど……。
みわ、アイツとふたりで大丈夫なんスか?」
「アイツって、マクセさん?
ふたりって言うか、別にふたりで泊まりに行くわけじゃないからそこは全く心配していないんだけど……」
「みわはちょっと無防備すぎるんスよ。
気を付けてよね、みわ」
「は、はい……スミマセン……」
「夜、連絡してね」
「うん、寝る前にするね。涼太も、ちゃんとご飯食べてよ」
「善処するっス」
うう……心配だなあ……。
もう食事もお風呂も済ませて、後はのんびりするだけだ。
ふと、先ほどあきから受け取ったお返しの事を思い出した。
「そうだ、あきがね、ふたりで観るのがオススメって、DVD貸してくれたんだ」
「へえ、いいっスね。観ようか」
「2枚くらい入ってたけど……」
ごそごそと紙袋を探ると、どうやら彼女がダビングしてくれたものらしく、DVDケースは無地で文字も何もない。
どうやらケースだけ別に買ったもののようだった。
「ラベル、ないや。ダビングしてくれたやつなのかな」
「タイトル聞いてないんスか?」
「なんかバタバタしてたらつい……。
1、2って書いてあるから何かの続編かな?
あきにメールで聞いてみようか」
「ま、再生したら分かるっスよ。折角だから、観よ」
「そうだね、すぐタイトル出てくるよね」
早速、DVDをデッキにセットした。