第62章 卒業
食後、こたつでお茶を飲んでいると、涼太がまたまた紙袋片手にやってきた。
今日は、紙袋だらけだ。
「みわ、ハイ」
白くて光沢のある紙袋。
「これはもしや……」
「ホワイトデーのお返し」
やっぱり。
「お返しは、皆で出し合ってくれたっていうブランケット貰ったよ!」
「あ、気に入ってくれた? オレと中村センパイで買いに行ったんスよ」
「凄く素敵で、気に入っちゃった! いっぱい使わせてもらうね、ありがとう!」
「なら良かった」
ニコニコと涼太は微笑んでいる。
私もつられてニコニコ。
……いや、そうじゃなくて。
また涼太のペースに乗せられるところだった。
「だから、もうお返しは貰ったんだけど」
「あれは皆からでしょ。コレはオレから」
「……うう……ありがとう……」
折角涼太が働いたお金、私に使って欲しくないのにな。
紙袋の中には、筒のようなものとキャンディの袋が入っている。
まずはキャンディの袋を取り出すと、袋の中で濃い黄色の飴がきらきらと光っている。
形はハート型に星型にと様々だ。
「美味しそう……これはべっこう?」
「うん。べっこう飴とはちみつ飴っス。
みわ、すぐ声嗄れちゃうから」
「ありがとう!」
んん……待てよ……。
それは、涼太のせいだと思うんだけど……。
「この筒はなぁに?」
「開けてみて」
筒を開けると、濃い青色の棒のような物が刺さっている。
ひょいと引き抜くと、はて……?
まるで長い口紅のような、携帯用電動歯ブラシのような。
「これね、ここを回すんスよ」
「わ、これ……ボールペン!?」
シルバーの軸のところをくるりと回すと、ペン先が現れた。
ボールペンとは思えないデザイン。
オシャレで、素敵。
「ごめんね、安物で。みわが普段使える物がいいかなって思って」
更に、クリップの横の部分には、筆記体で名前が入っている。
「名前まで入ってる……」
嬉しい。
これなら、授業中でも部活中でも、ずっと使っていられる。
「喜んで貰えて良かったっス。良ければ使ってね」
「ありがとう……! 毎日、大事に使うから!」
また、宝物がひとつ増えた。