第13章 肌
「黄瀬くん、足、どうだった?」
……この状況でも、オレを心配するのか。
「とりあえず病院行ってきたし、暫くは安静っスけど大丈夫っスよ」
「今日、走ったでしょ」
「ヘイキヘイキ」
学校からすぐ近くのみわっちの新居に向かおうとする。
「あれ? ……どうしたの?」
「いや、今日はあんなことがあったし、もう……」
「え……2人で居られる時間、楽しみにしてたんだけど……行っちゃ迷惑?」
「いや、迷惑とかじゃなくて、一緒にいたらほら、その……」
「『続き』、するって……」
「っ!みわっち、それは全然無理しなくていいから! オレ、焦ってないし!」
そもそもあんな事があって、もうオレと付き合うの、嫌になってしまったのではないか。
でも、ほんとにそうだったらと思うと、聞けない。
臆病でズルい自分。
もしかして、別れ話をする気じゃ……?
不安な気持ちを抱きながら、オレの家に向かった。
「ごめんね、折角近くに引っ越したのに。疲れたっスよね」
「ううん、大丈夫」
「なんか観るっスか? 映画とか」
「わ、すごい、いっぱいあるね!」
みわっちと一緒に過ごせればなんでもいい。
今は彼女を傷付けたくない。
オレも許して貰えるか、分からない。
それぞれ風呂を済ませたあと、オレの部屋で、部屋を少し暗くして映画を観る。
シャンプーの香り。
密着している肩に全神経が集中していて、映画の内容が全く入ってこない。
画面を見るみわっちの横顔が儚げで、美しかった。
そうこうしている内に、エンドロールが流れ始めてしまった。
全然観ていなかった。
「……終わっちゃったね」
みわっちが、オレの肩に頭をもたれかけてくる。
すかさずオレは、机の上のカップを見た。
「……みわっち、お茶まだあるっスか?」
しまった、ちょっとわざとらしかったか。
「あ、貰おうかな、ありがとう」
「ちょっと、ごめんね」
そそくさと台所に移動する。
折角、甘えてきてくれてたかもしれないのに。
台所でティーバッグを選んでいると、みわっちがついてきた。
「……さっきのやつ、美味しかったね」
「じゃあ、同じやつにするっスね」
なんだか会話がぎこちない。
お茶を持って再びオレの部屋に戻る。