第12章 夏のはじまり
学校に戻って、みわっちの顔を見て皆が驚いた。
手当ては、3年のマネージャーのセンパイにお願いすることにした。
……こういう時は、女同士の方がいいだろうという判断だった。
練習はすでに終わっていた。
今は皆、激戦の疲れを癒す時だ。
普段のように長々と残っている者はいなかった。
オレの様子に驚いたレギュラーの
センパイ達は誰一人帰らず、オレ達の帰りを待っていてくれたようだ。
「黄瀬、神崎は大丈夫か。ケガしていたようだったが……」
「今、センパイにみてもらってるっス。……オレのせい、なんス……」
黒子っちがいてくれなかったら。
たまたま、話を聞いてくれていなかったら。
寒気がする。
その後、センパイ達と少し事情を話して、笠松センパイや小堀センパイから注意を受け……ひたすら、皆に謝った。
「黒子っち……今日はマジで、ありがとう」
「黄瀬君、キミは人気者なんですから本当に気をつけないと……」
「猛省するっスわ……黒子っち、オレに何か用だったんスよね。どうしたんスか?」
「いえ、また次回でいいです。恋人の時間を邪魔するなんて野暮なこと、したくないので」
……もう、それどころではなくなってしまった。
傷ついた彼女を癒すには、どれくらいの時間が必要だろうか。
それに、オレにそれができるのか……
今回の一件はオレのせいなのに……
みわっちにあわせる顔がない。
部室から、手当てが終わったみわっちが出てきた。
「あ、黄瀬くん、お待たせ……」
顔色が悪い。ただでさえ色白な肌が真っ白だ。
当然だ……あんなことがあって、平常心でいられるわけがない。
「センパイ、ありがとうございました」
オレは深々と頭を下げる。
センパイは少し驚いた顔をしていた。
「みわっち……今日は、本当にごめん……」
「……どうして黄瀬くんが謝るの?」
「オレの周りにいた女達が……」
「……かえろ、ね?」
細く、冷たくなった手を握る。
ゆっくりと、手を繋いで帰路に着いた。