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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第62章 卒業


オレたちは、センパイとの最後のプレーを堪能した。

センパイ達のこの背中を、忘れない。
オレたちも、後輩へ引き継いでいくんだ。

結局その夜は遅くまでボールの音が体育館内に響き、警備員が回ってきてようやくお開きとなった。

元々、夜の体育館使用申請はカントクが出してくれていたらしい。

周りの人々の温かい心遣いが嬉しかった。




センパイとは笑顔で別れたが、帰り道、みわはまた泣いていた。

「みわ、大丈夫?」

「ひっく、ぐす」

「……みわ」

「ヴン」

酷い鼻声だ。

「オレたちの代で全国制覇、しよう」

「……ヴン」

「ぶは、凄い声っスね」

うちの頼りになるマネージャーは、泣き虫だ。

鼻をくいくいとつまむと少し苦しそうな顔をした後に、微笑んでくれた。

「そうそう、みわは笑ってる方が可愛いっスよ」

赤い鼻の彼女の手を握った。




澄んだ空気の中、携帯の着信音が鳴り響く。

「みわ、鳴ってる」

「ヴン……ぼしぼし。あ、だいじょゔぶ。
そづぎょうじき、だっだがら」

……これは、相手に伝わっているのか?
どうやら、伝わってはいるらしいが。

「ヴン、わがっだ」

そう言うと、電話を切った。

少し浮かない顔だ。

「……おばあぢゃんが、15日に退院ずるんだっで」

「……それは良かったっスね」


つまり、それは。

ガキが夢見る時間は終わりって事か……。

短い間に下りる沈黙。

みわが、オレのブレザーの裾をちょい、と引っ張った。

不安そうな、悲しそうな顔。

「……帰ろっか」

そう声を掛けると、こくんと小さく頷いた。


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