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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第62章 卒業



「……先輩……頼みって……?」

どうしよう。
全然知らなかった。

先輩の気持ちを踏み躙るような事、していなかっただろうか。

……いや、涼太と仲良くしている事自体が、先輩を傷つけていたとしたら……?

そうしたら、先輩の頼みって一体……。




「コサージュをね、つけて欲しいんだ」




「……え?」

先輩の胸元には、今朝中村先輩が付けたコサージュが付いている。

先輩はポケットをゴソゴソと探り、胸のものと同じコサージュを取り出した。

「先輩、それって……」

「これ、生徒会からもう1個、貰って来ちゃったんだよね」

先輩はそう言って、いたずらっ子のような顔をして笑った。

そんな表情もするんですね、先輩。

「これ、神崎がつけてくれないかな」

「ふたつなんて贅沢ですね」

「最後くらいいいだろ?」

「ふふ、実は皆が羨ましかったんです。
私もつけたいなって思っていました。嬉しいです」

コサージュを受け取り、一歩踏み出して中村先輩のコサージュの隣に当ててみた。

「中村先輩に怒られちゃいますかね」

「大丈夫だよ」

後ろの安全ピンを外し、既に付いているコサージュの隣につけた。

「……先輩、ご卒業おめでとうございます」

今度は大丈夫だ。

笑って言える。

笑顔で顔を上げた。




瞬間、ふたりの影が重なった。




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