第12章 夏のはじまり
オレのせいだ。
オレのせいだ。
オレが、バカ女達を制御してなかったから。
カラオケ店の前で、険しい表情の黒子っちとすぐに合流出来た。
「黄瀬君、こっちです! 8階!」
「黒子っち!」
オレは、目に付いた非常階段を上ろうとする。
「黄瀬君、エレベーターの方が早い!」
「……ッ」
乗り込んで"閉"ボタンを乱暴に連打した。
8階までが永遠のように感じる。
「黄瀬君……どうしてこんな……ハァハァ」
「オレの……せいっス……」
エレベーターが8階に到着し、オレたちは飛び出した。
黒子っちが、部屋番号の書かれたプレートを見渡す。
「こっちです……!」
部屋のドアを開けると、目に飛び込んできたのは。
スマホを向け撮影している女達。
片方は何かに跨り、片方はそれを押さえている男達。
跨った男はズボンのベルトに手をかけているところだった。
男たちの下に、みわっちがいた。
顔を腫らし、ブラウスは破け、口には何かを詰められている。
その顔を見た瞬間、目の前までもが真っ白になった。
「……せくん! 黄瀬君!」
黒子っちの声で、我に返る。
オレは、男の胸ぐらを掴み殴っていた。
「……先ほど店の人に警察を呼んで貰いました。
一部始終は防犯カメラに映っていて、店員さんも証言してくれるそうなので、ヤツらの処分は免れないと思います」
「……みわっち」
また、泣かせてしまった。
「……黄瀬、くん……」
殴られたのか。顔が腫れ、口の端から血が滲んでいる。
ブラウスのボタンは壊され、力ずくで下着がめくりあげられていた。
Tシャツを脱いで、彼女に被せる。
「……走ってきたから、汗臭いっスけど」
これで何度目だ。この細い肩。
みわっちを抱き締める。
「っあ……あぁ……」
「ごめん……ごめんみわっち……」
「神崎さん、黄瀬君、こっちへ」
こんな所に長居は無用だ。
みわっちの手を引くが、彼女はへたり込んだまま。
「ご、ごめんなさい、腰が抜けちゃって……立てなくて……」
お姫様抱っこで街中を歩くのは、さすがにかわいそうだ。
みわっちの前でしゃがみ、背中を向ける。
「ご、ごめんね、重いのに……」
みわっちをおんぶしたまま学校へ戻った。