第62章 卒業
散々皆で大泣きして、ズルズル鼻水すすって、笑って。
「先輩、今までありがとうございました!
ご卒業おめでとうございます!!」
ようやく、笑顔でそう言う事が出来た。
「センパイ……センパイのチームでプレーする事が出来て、幸せでした」
涼太が、笠松先輩へ握手を求める。
「黄瀬、絶対優勝しろよ」
元キャプテンはエースにそう言い、強く手を握り返した後に、拳で胸を叩いた。
「任せて下さいっス!」
琥珀色の瞳は涙に濡れ、目の周りは縁取ったように真っ赤だ。
信頼で包まれた体育館。
こうして、強豪校の伝統は引き継がれていくのだというのを実感した。
図ったように鳴り響く予鈴に、慌てて解散し、それぞれが自分の教室へと向かっていった。
卒業式は、厳かなムードで執り行われた。
あれだけ泣いたのに結局私はまた泣いてしまい、涼太に頭を撫でられながら笑われた。
涼太だって、また鼻が赤いくせに。
流石に今日は部活の練習もない。
卒業式の後は、謝恩会が開かれる予定だ。
駅前の小さなレストランを貸し切って行われる為、先輩方と保護者の方は先に向かっていた。
在校生はホームルームのため、一度教室に戻る。
席に着くと、スマートフォンがメール受信を告げた。
小堀先輩からだ。
"神崎へ
お疲れ様。
忙しいとこ悪いんだけど、
謝恩会の前に、時間を貰えないかな。
バスケ体育館裏で待ってます
小堀 "
……どうしたんだろう?
待ってます、という事はまだ先輩は謝恩会会場に向かっていないという事だろうか。
ホームルーム後、涼太には教室で待っていて貰い、体育館裏に向かった。