第61章 恋人達は愛に誓いを
そのままオレ達はカントクが運転する車でしゃぶしゃぶ店に連れて行かれた。
それぞれが個室になっていて、個室もまるでお屋敷の離れのような造り。高級そうで、大人の接待に使われそうな店だ。
みわは、廊下を歩いている時からキョロキョロしていた。
「さ、好きなだけ食べるといいよ」
マクセサンはメニューをオレ達に渡すなりそう言っているが、隣のカントクは若干顔が引きつっている。
大丈夫なんスか……。
と思いつつも、まあ払うあてがないのに連れては来ないだろうということで、遠慮なく注文させて貰った。
オレ達のオーダーを横で聞いていたみわの目がどんどん見開かれていくのが分かった。
「……で、なんか話があるんスか?」
まどろっこしいことはやめて、さっさと本題に入って欲しい。
「それなんだがな」
頬をツヤっと輝かせたカントクがずずいっと主張してきた。
「春休みの合宿について、いい話を持って来てくれたんだ」
「春休み?」
確かに、春休みにも合宿がある。
センパイ達からは、いつもは夏と同じように合宿所での合宿と聞いているが……。
「コイツが懇意にしている大学チームの合宿に、参加させて貰えるという話だ」
「!!!」
大学チームの合宿に。
「勿論合同合宿なわけでは無いから、メンバーは厳選して数人だけだが。悪い話ではないだろう?」
悪い話ではない、どころの問題じゃない。
またとないチャンスだ。
早川センパイも鼻息が荒くなっているし、中村センパイもクールな表情ながら頬が紅潮している。
「あとは海常敏腕マネージャーの進化」
マクセサンが横から口を挟む。
みわの?
チラリとみわを見る。
驚いている様子はなさそうだ。
「あと、黄瀬君にはもう一段落レベルアップして貰わないとね」
「レベルアップ……」
「例え海外の選手とやり合っても遜色ないレベルまではね。それにはまず……『ゾーン』」
「!」
オレはまだゾーンに入った事はない。
でも、もしそれが……
「いいっスね、燃えてきた」
「その為には、春休みまでにまずそれぞれの課題の克服が必要になる。それをゆっくり話したくてね」
オレ達は肉の存在を忘れ、彼との会話に夢中になった。