第61章 恋人達は愛に誓いを
片付けが終わり体育館へ戻ろうと走り出すと、後ろから追いかけてくる足音がする。
誰だろう?
と思ったのは束の間、これはいつも聞いている足音だ。
私も結構急いでいるのに、どんどん足音との距離は詰められて……。
「つーかまえた」
後ろから体重をかけられて、危うく転げるところだった。
「りょ、涼太っ! あ、あぶなっ」
翻ったジャージとサラサラした髪の毛に思わず目が行ってしまう。
まるでドラマのワンシーン。
「咄嗟の時は涼太って言ってくれるんスね」
あ……しまった……。
「……黄瀬くんも、体育館に戻るの?」
「うん。……アノヒトに呼ばれてるからね。嫌だけど」
「そんなに毛嫌いしなくてもいいんじゃない? ちゃんとしたひとだよ」
涼太がこんなに壁を作るのは珍しいな。
普段は、嫌な人でも表面上はニコニコと仲良さそうにするのに。
「アイツを庇わないでよ、みわ。
オレいま、我慢してんスから」
へ?
なんの話?
「それってどういう……」
振り返った途端、唇が重なった。
「……!?」
ちょっと、誰が通るか分からない廊下なのに!
「ん、ッ」
涼太から匂う汗の香りで、頭がくらくらしてくる。
ああ、そう言えばオスの汗でメスを誘惑する動物っていなかったっけ……なんて余計な事を考えていると、すっと唇が離れた。
「……あ」
「……蕩けたカオ、アイツに見せたくねぇスわ」
ぽむっと私の頭を触ってから、私の手を取って走り出した。
「さ、面倒な用はさっさと終わらせるっスよ!」
「わっ!」
ぐんぐんスピードが上がっていく。
これが、彼の見てる世界……
けどっ!
「りょ、きせ、まって、はやいっ!」
結局、体育館に着くまでに私の足がもつれて転びそうになったのは1、2回では済まなかった。
「やーやーやーお二方、お疲れさん。メシ行くぞー」
にこやかなマクセさん。
「……は?」
「なんだ、腹減ってないわけじゃないだろ?
ほら、源ちゃんが車出してくれるって言うし、行こう行こう」
そこには、いつの間にか召集された早川先輩と中村先輩の姿もあった。