第61章 恋人達は愛に誓いを
「あ、君が黄瀬君の専属トレーナー? 声掠れてるけど大丈夫?」
枕サンだかマクセサンだかなんだかもうどうでもいいけど、一直線にみわへ向かって行く。
なんでだよ。
他にもマネージャー、いっぱいいるだろ、ほら。
「おはようございます。神崎です。
すみません、……ちょっと声が嗄れてしまって。あの、専属トレーナーというのは……?」
みわは丁寧にお辞儀をして挨拶した。
「アレッ、間違えた?全雰囲気がそうかと思ったんだけど……黄瀬君のトレーニングメニューを作ってるのは、君じゃない?」
「あ、私です」
「だろ? ビンゴ!」
マクセサンは嬉しそうにみわの肩を抱いた。
「えっ、あの、ちょっと」
「オレね、マクセって言うの、よろしくね。
この間黄瀬君に名刺預けておいたんだけど、気が向かなかったかな?」
「あ、…………すみません、なかなかタイミングが分からなくて……」
なんでオレを庇うんスか。
オレから受け取ってないって、言ってよ。
「いつでもいいよ、可愛い子の相談なら24時間受付しちゃうから」
「あ、ありがとうございます……」
困ってんだろ。
触んなよ。
触んじゃねーよ。
「みわ!」
ふたりに駆け寄って、みわの手を引いた。
「みわ、テーピングお願い」
「あ、はいはいっ! マクセさん、すみません」
ぺこぺこと謝ってみわはオレの元へやってきた。
「もー黄瀬くん、あんな風にしたら失礼じゃない」
様々なサイズのテープが入っているプラスチックのケースを持ってきて、オレの足を触りながらぶーぶー文句を言っている。
「涼太って呼んでよ、みわ」
「……え?」
「学校でも、涼太って呼んで」
「え、それは……やっぱり学校では、皆と一緒にした方がいいかなって……」
「一緒じゃなくていいじゃん。
みわはオレの特別なんだから、涼太って呼ぶのが普通じゃないスか?」
そしたら、変な虫もつかなくなるだろう。
そう思ったのに、結局みわは首を縦に振らなかった。