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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第61章 恋人達は愛に誓いを


頬を撫でる優しい感触。

身体はぽかぽかと、あたたかい。

……瞼が重い……。

ズシリとのしかかってくる眠気に逆らうように目を開けると、目の前にはこたつ布団。

そこはリビングだった。

……あれ……?

……一瞬様々なことが頭の中を駆け巡って、記憶が途切れる前の事を考える。

え、涼太がお風呂に入っている間に私、寝ちゃってた……!?

と、いう事は今日はまだバレンタインデー。

あまりの緊張に脳が疲弊してしまっていたのか。

バカバカ!
これからが大切なんだってあれだけ計画を立てたのに!!

横になっている身体を起こそうとして気づく。

涼太に膝枕をして貰っている状態になっていた。
頬に触れているのは彼の手。

だから、どうしてこうなってしまっているのか!

今日は涼太に満足して貰えるよう、頑張ろうと思っていたのに……。

「あ、みわ……起きた?」

涼太だって期待していたかもしれないのに、寝てしまった私を責める事ない、優しい声。

「ごめんなさい、寝ちゃってた」

「疲れてたんスね。もう今日は寝よっか」

そう言って頭を撫でてくれる手があまりにもゆるやかで、優しくて。

何故か涙が出てくる。

「うん……私、歯を磨いてから行くから、先にベッドに入っててくれる?」

「……ん、了解っス」




洗面所で、冷水を思いっきり顔にかけた。
ぶるりと背筋が凍る感覚に、眠気が覚める。

歯を磨いて更に意識を覚醒させ、
よし、と気合いを入れてふと気付いた。

"先にベッドに入ってて"

これは、隠語としてふたりの間で交わされる言葉だった。

意味は

"今日はNOです。
だから先に寝てしまって構いません"

だ。

元々は、断り切れない私の事を配慮して、涼太が提案してくれたのだった。

「乗り気じゃない時も、みわは断りにくいだろうから」と。

実際に使った事なんて殆どなかったから、忘れてた……。

……。

顔が青ざめていくのが分かる。
冷水で顔を洗わずとも、全身に浴びた気分になり、すっかり目は覚めた。

最悪だ……。

今から私は、自分で断ったものを自分から仕掛けようとしているのか。

……重い気持ちを背負いながらも、涼太の部屋に向かった。


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