第61章 恋人達は愛に誓いを
「ふぃ、美味かったっス! ご馳走さま!」
「良かった、食べられて」
渡したメッセージカードは、後でひとりで読んで貰うようお願いした。
本当に良かった……ここ最近での一番の心配事が無事に終わって、心底ホッ。
……でも、まだ夜は……
涼太は紅茶を飲んでいる。
カップを握る長い指に、自然と視線が吸い込まれた。
「みわ」
「はっハイ!」
うっかり見惚れていたのがバレバレだったんだろうか。
涼太はまた、含みのある顔でニコニコしている。
「お風呂、どうする?」
「え、えっと……今日は、別々がいいかなって……」
「ふぅん、そうスか」
涼太が、私が帰って来るまでに入ってなかったということは……つまりそういうことを期待していたんだろうけど……ごめんね。
お風呂でエネルギーを使ってしまうと、その後の勇気が出ないまま終わりそうで……。
「じゃあみわ、先に入っていいっスよ」
ちょっとしょんぼりした涼太を横目に、バスルームへ向かった。
「はぁ……」
洗面所に着いた途端、思わず緊張で座り込んでしまう。
今日の夜は、私からお誘いするんだ。
もう、丸々1ヶ月以上……してないから、このままでも多分涼太が誘ってくれるんじゃないかと思うんだけど……。
ちゃんと、私もあなたが欲しいという事を伝えたい。
そう思って……そう思っていたのに、どうしよう、今になって決意が揺らぎそう。
失敗したら、シラけちゃったらどうしよう。
そんな事ばかりがぐるぐるぐるぐる巡ってしまって。
涼太がいつも誘ってくれるように……と思ったけど、涼太はいつも自然すぎるんだ。
あれよあれよという間に火をつけられ、行為は始まってしまっている。
ああ、またウダウダ考えちゃう。
気を取り直して指の先まで丁寧に丁寧に、磨き上げた。
「お、お風呂ありがとう」
「おかえり。オレも入って来ちゃうね」
「うん」
涼太がリビングからいなくなって、いよいよ緊張が高まる。
考え事に不要なテレビを消し、お水を飲んでふぅと一息ついた。
身体も温めておかないと……と思い、ソファに寄りかかりながらこたつに足を入れた。
極度の緊張で固まりまくっていた身体を、足に感じる熱が和らげてくれる。
同時に、今日1日の疲れをじんわりと浸み出してくれるような……。