第61章 恋人達は愛に誓いを
カサカサと袋を開けると、石畳状のチョコが6粒、これまた可愛いトレーに入っていた。
「すげぇっスね、これ生チョコ?」
「あ、よく分かるね。そうなの。
ピック、横につけてあるから使って」
生チョコって家で作れるのか……。
手が汚れないよう、可愛いハートのピックがついている。
なんか、勿体無いな。手作りチョコ。
こんなにも食べるのを躊躇われるチョコは初めてかもしれない。
大事に食べよう。
「んじゃあ早速、1粒……」
ごそごそと袋を探ったら、みわに制止された。
「あ、待って涼太」
「ん?」
みわは慌てたようにピックと袋を取り上げてしまう。
「どしたんスかさっきから」
今度はみわがカサカサと袋の中に手を入れた。
そして、チョコの刺さったピックを取り出して……
え
これはまさか。
「あ、あの、……はい、あーん……」
顔を真っ赤にしたみわが、まさかの『あーん』攻撃を仕掛けてきた。
まさか、食べさせて貰えるとは。
この間のパンケーキ屋では散々渋ったのに……
素晴らしい日だ、バレンタインデー。
「嬉しいことばっかりっスね」
「あの、目瞑って」
「ん、こうスか?」
「いいって言うまで、あけちゃダメだよ」
折角照れまくりの可愛いみわが見れるのに勿体無いけど……。
なんか、仕掛けでもあるんスか?
「あーん」
パクッとチョコを頬張ると、すっと溶けてふんわりとした甘さが口中に広がる。
「ん、ウマ……」
目を瞑ったまま感想を言おうとしたオレの唇に、柔らかいものが押し当てられた。
それは、まさかの。
「?!」
驚いて、許可を得ないまま目を開けると、首筋まで真っ赤にしたみわがオレに……
キスをしていた。
「あッ、開けちゃダメだって……!」
「みわ」
「は、はい、 残りのチョコ! 良ければ食べて!!」
バサッと残りのチョコを手渡されて、みわは一目散に逃げて行った。
マジか。
思ってもみなかった、みわからのキス。
「……反則っスわ……」
チョコよりもずっと甘い感覚に、痺れた。