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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第60章 お互いの


期待と緊張が入り混じった気持ちで目を瞑っていると、耳朶を弄っていた指はそっと耳を離れ、再び髪を撫で始める。

「……って、いつもならキスしたいところなんだけど……今日は、我慢するっス」

するすると頭を撫でたまま、残念そうな声。

「え……?」

どうして?

思いがけない涼太の言葉に、つい聞き返してしまった。

「さすがに今回の件は、反省した。
これで、はいごめんなさい仲直りですねキスしましょって、調子良すぎるっしょ」

「……そんな」

「オレには少し、我慢が必要なんスわ」

え、ええ……
ここでお預けって、そんなの、私も……

ちゅっ、とまたおでこにキスが落とされた。

「あんまりオレを甘やかさないで、ね」

再度ぎゅっと抱きしめられた後、涼太はもそもそとこたつから出てしまった。

「ごめんね」

でも、しっかり気持ちは高揚していたようで、制服のスラックス越しに見える彼の欲望は、大きく膨れ上がっていたのが分かった。

……。
涼太が我慢しているのに、私がしないなんてダメ、だよね。

仕方なく私も起き上がり、こたつテーブルの上を片付ける事にした。

「あ、ごめん。ゴミ、こっちに貰うっス」

コンビニの袋やインスタント食品のゴミを纏めて涼太に渡す。

「……みっともないとこ、見せたっスね」

「ん……ちょっと……ビックリした」

一緒に住んでた時は、マメすぎるほどマメで、あんな風に洗濯物が散乱したり、こうやってテーブルの上が……なんてこと、考えられなかった。

「みわがいなくなったら、こんなモンっスよ」

「……そうなの?」

「なんもやる気がしなくなっちゃって」

キッチンのゴミ箱前でなにやらアレコレやっている涼太に、今度は私が後ろから抱きついた。

「ん? どしたんスか?」

泣きたくなるほど、優しい声だ。


好き。

好き。

……大好き……。


「……なんでもない」

「ん……そうっスか」

涼太も、何も言わなかった。

そのまま暫く、涼太の体温を感じていた。



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