第60章 お互いの
「みわ、足が冷えちゃうっスよ。ご飯なんて後でいいからコタツ入ろ」
「ふふっ、本当にこたつが好きだね」
「なんか、一緒にコタツに入れるって、特別な感じがしないっスか?」
「……そう?」
「カッコつけてる恋人たちには出来ないっスよ、コタツでゴロゴロ」
「……あはは、それはちょっと分かるかも」
ふたりでころんと横になって、顔が目前まで近付いた。
「みわ、そんなにオレたちと一緒に遊びたくなかったんスか?」
おでこから生え際に沿って耳まで撫でられるこの行為は、まるで愛撫のよう。
「ううん……邪魔したくなくって……それで、あきと遊ぶなんて言っちゃった。
本当にあきと会いたいと思ってたんだけど、さりあさんにお茶を誘われて……」
「で、あんなにタバコの臭いくっつけて帰って来たんスね」
「え? タバコの……臭い?」
「どこの男のニオイくっつけてきたんだって……思ったんスよ」
「そ、そんな」
「ごめん、それも思い込みだった……本当にごめん」
背中に回された腕が、私の身体を涼太へ強く引き寄せ、髪に顔を寄せているのが分かる。
涼太の息が頭皮に当たるのすら、ドキドキする。
「……今日はちゃんと、みわのいい匂いがするっスわ」
そんなことよりも、目の前の涼太の胸元から香る匂いの方が、ずっとずっと強力だ。
息をするだけで、くらくらする。
異性を惹きつけるフェロモンみたいなものを出しているんじゃないか。この人は。
「……みわ」
あ、この声は……キスを強請る声だ。
甘えて甘えて、子どもみたいに甘い声。
手が、頬に添えられる。
ゆっくり、涼太の目の前に顔を向けられて……
あ、やっぱりクマが少し……
でも本当に、綺麗な……
ふと、この距離感に恥ずかしさを覚える。
きっと、私なんてもっとクマが酷い。
顔も赤くなっているかもしれない。
唇を重ねたいという欲よりもドキドキと恥ずかしさが勝り、再び胸元に顔を押し付け、逃げ込んだ。
「……なーに恥ずかしがってんスか、みわ」
後頭部を優しく撫でられる手つきに、興奮が抑えられない。
指が、耳朶に触れた。
「っア……」
「みわ……」
涼太に、食べられてしまう。