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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第60章 お互いの


私の鎖骨の前で逞しい腕が交差している。

それが、抱きしめられているのだと気付くのにたっぷり十数秒はかかった。

「……みわ、ごめん。バカなオレを許して」

耳の少し上から聞こえるのは、愛しい人の声。

「ごめん」

どうして涼太が謝っているの?

そんな言葉が聞きたかったんじゃない。
謝らなきゃいけないのは、私の方なのに。

「ごめん……みわ」

ギュウッと腕に力が入る。

その熱が凍った心臓まで届いて、ほろりと溶かしていくのを感じる。

私が、謝らなきゃ。
そう思っているのに、言葉が全然出て来ない。

「……りょ」

声を出したら、頬から何かが落ちた。
粒のような、水のような。

ポタリと落ちたそれは、涼太の袖にシミを作っていく。

「みわ……泣かせてばかりで……ごめん……」

私、なんで泣いちゃってるの?
ぽろぽろぽろぽろと、涙が流れている。
頭がぐちゃぐちゃだ。

ずるい。
ずるい自分。
泣いて誤魔化そうとする、汚い女。

「オレ、謝ることしか出来なくて……ごめん……」

涼太に謝らせてばかりで、どうするの。

何か言わなきゃ。
嘘ついてごめんなさいって、言わなきゃ。
許してって、ちゃんと言わなきゃ。


今までありがとう、って言わなきゃ。
最後くらい、ちゃんと言わなきゃ。


「りょうた……」

「うん、みわ、言って」

今、こころの一番上にある言葉を出すだけ。

靄のかかった頭でも、それ位できるでしょう?

ごめんなさいって。

ごめんなさいって、言うんだ。











「りょうた……………すき……」


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