第60章 お互いの
「……やべ……」
無人の部室に戻ったオレは思わず独りごちた。
本当に、純粋に、謝りたいだけなんだ。
それなのに、身体はどうしてこんな反応をする。
「最悪だ……」
このままじゃ、制服も着れない。
皆帰って誰もいないのをいいことに、おもむろに破裂寸前の屹立を手で包み、扱いた。
「みわ……ごめん……」
謝りながらも、頭の中では自分の愛撫で乱れ喘ぐみわを想像し、先ほどの指の感覚を思い出しながら強く扱くと、すぐに射精した。
「……お待たせ」
純粋なみわを頭の中で犯し、欲を発散させていたのが申し訳なくなり、みわを直視できない。
「……うん」
みわも目も合わせずそう言って、歩き出した。
……会話がない。
ごめん。
酷い事を言った。
帰ってきて欲しい。
お願い、帰ってきて。
なんて言えばいいんだ。
「……みわ」
「はい」
「花、枯れちゃうんスけど」
「え」
昨日、オレが部活でいない間、みわは着替えを取りに家に戻って来たらしい。
恐らく急いでいたんだろう。
部屋は少し荒れていた。
それなのに、クリスマスローズの土はしっとりしていた。
ちゃんと、水をあげていった証拠。
どんなに急いでいても、あなたが買ってくれたこの花だけは。
そんな彼女の声が聞こえるようで、胸が苦しくなった。
「……クリスマスローズ。
みわがいないと、枯れちゃうよ」
「……じゃあ鉢植え、取りに行く……」
「……出て行くの?」
怖くて怖くて聞けなかったこの言葉。
「………………たぶん」
みわの声も震えていた。
遠くで救急車のサイレンが聞こえる。
爆走するバイクの音が聞こえる。
最終宣告のようなその言葉に、返すことができない。