第60章 お互いの
するりと、みわの柔らかい指が触れた。
首に。
「ん、あ」
足のみをやって貰えると思って足にしか意識を向けていなかったので、無防備だった首筋を突然さすられて、女の子みたいな声を出してしまった。
「ご、ごめん」
一体何に謝ったのかよく分からないが、とりあえず物凄く恥ずかしい気持ちをなんとか成仏させたくて、それだけ言った。
みわは特に返事をしない。
お願い、なんか言って。
このまま成仏できず、地縛霊になりそうだ。
みわの手はスルスルと肩に向かい、張っていた筋肉を揉んでくれる。
腕、肩甲骨、背中、腰、尻……
まるで、みわに全身を愛撫されているようだ。
いつもは気持ち良くて始まるとすぐに眠ってしまうのに、意識はどんどん覚醒していく。
耐えられない。拷問。なんて地獄。
やっぱり一度抜いておくべきだった。
「っ、っ……」
声を上げないようにするのでもう必死。
ぐるぐると様々な思いが巡り、訳が分からない。
「黄瀬くん、大丈夫?」
するっと耳を通っていく涼しげな声。
こんな風に感じている自分が恥ずかしい。
「……ヘーキ……っス」
うつ伏せになっているので、膨張した屹立が圧迫されていて痛い。
でも、もう足にさしかかっている。
もうすぐ終わる。もう少しの辛抱だ。
「ん、こんな感じかな……前も見ようか」
前?
「腹筋とか、痛まない?」
前は無理っス。
腹筋とかいう話じゃなくて。
「も、もうバッチリっス、ありがとう」
「そう? また痛くなったところがあったら、すぐに言ってね」
「みわこそ、手、大丈夫なんスか」
「うん、大丈夫だよ」
みわは鞄から小さなタオルを出し、額の汗を拭っている。
全身を使ってマッサージをしてくれているから、それはいつものこと……なんだけど。
……ダメだ、なんでこんな不純な事で頭いっぱいになってんだ。この猿。
みわは、タオルを仕舞うとコートを羽織った。
まさかもう、すぐに帰るつもり?
「みわ、着替えてくるから待ってて!」
そう言って、返答を待たずに急ぎ部室へ戻った。