第60章 お互いの
「おはようございます!」
体育館に響き渡る挨拶。
その中にはみわの声もあった。
ジャージ姿であちこち動き回る彼女は、いつも通りだ。
でも、表情が明らかに違っていた。
笑顔がない。
ブスッとしているわけでは決してないが、
表情が、ない。
まるで、一番最初に会った時のようだ。
今のままでは、彼女の気持ちを推し量ることが出来ない。
そして、決して目が合う事もなかった。
みわ。みわ。
焦れる気持ちが身体まで焼き尽くしていくようだ。
【好き】の反対語は【無関心】である。
そんな言葉がよぎる。
みわの中ではもう、オレは過去の男なんだろうか。
なんて言えば伝わるんだろう。
なんて言えば戻って来てくれる?
今日は1日ずっと、ずっとみわを見ていた。
授業中だって、ずっと。
流石にバスケの練習中にずっと見てる余裕はないけれど。
それでも、目を離さないようにちらちらと視線を走らせていた。
「ありがとうございましたー!!」
本日の練習が、終了した。
こんなに寒い時期なのに体育館内は熱気に包まれ、部員は皆汗だくだ。
トレーニングルームで1日筋肉を虐めたオレも、身体が火照って汗を掻いている。
冬こそ、シャワーを浴びないと風邪を引いてしまう。
でも、またシャワーを浴びている間にみわは帰ってしまうかもしれない。
パタパタと片付けをしているみわに目をやった。
今日1日、みわがオレを見ているという事はなかった。
今まで、そんな事一度だってなかった。
視線をみわにやると、いつも目が合ってた。
彼女がオレを気にしてくれていた証拠だ。
今は、それがない。
もう、オレに興味はなくなってしまったのか。
もう、オレとは話したくもないのか。
【ウダウダウダウダ、クドクドクドクド悩んでたって、仕方ねーだろ!】
黒子っちと笠松センパイの言葉が脳内再生された。
「……みわ!」