第60章 お互いの
出ない。
みわは、何度かけても電話に出てくれない。
オレからの連絡だから、避けているんだろうか。
……当然か……。
あんなに酷い事をしたんだ。
相当傷付いているだろう。
今、どこにいるんスか。
あきサンとこっスか。
顔が見たい。
ちゃんと謝りたい。
本人に連絡が取れないからって外堀を埋めるような事はしたくないけど……あきサンに電話をかけた。
『はい、黄瀬?』
「あ、そうっス。ごめん……みわ、そっちに今いる?」
『ううん、いないよ。もう帰った。
おばあさんの家に居ると思うけど』
そうか、もうあきサンのとこにはいないのか……。
意外だった。
あきサンに色々相談すると思っていたから。
「そっスか、ありがとう」
『ねえ、黄瀬。今から行くならやめてよ』
まさに今から行こうとしていたのだが。
「……どうしてっスか?」
『本当にね、あんなみわ、見た事ない。
気軽にごめんなんて言って済むレベルじゃない。
考えもなしに衝動的に会いに行くなら、やめて』
考えもなしに……。
そう言われると、今のオレはみわの事が好きという気持ちしかない。
謝りたいという気持ちしかない。
これは果たして衝動的なんだろうか。
こんな気持ちではダメだということか?
「……なんかみわ、言ってたっスか?」
『ううん、あれから一切あんたとの事は聞いてない。不気味なくらい。
もう、みわの中ではあんたと別れたと思ってるのかもしんない』
一瞬、視界がぐらりと揺れた。
オレとはもう、別れてる?
『あの子のこころが何にも見えない。
お願い、明日学校で会うでしょ。
今夜行って動揺させるのはやめて』
「……わかった……っス……」
オレは、取り返しのつかないことをした。
それは、分かってるつもりだったのに。