第60章 お互いの
「はぁ……」
日が落ちると、冷えるなぁ……。
生活に最低限必要なものは、涼太が部活に行っている間に家に行き、こっそり持って来た。
あきの家にダラダラとお世話になっているわけにはいかないし、防犯的な面でもおばあちゃんの家をずっと空けているわけにはいかない。
今日から、おばあちゃんの家で生活させて貰おう。
おばあちゃんにそう言ったら、たまに様子を見に行ってくれるのは助かるけど、生活する必要はない。黄瀬さんの所に戻りなさいと散々言われてしまった。
でも今、どんな顔であの家に帰ればいいのか分からない。
おばあちゃんの家。
一軒家は、やっぱり冷えるなあ。
……最近、家にひとりでいる事って少なかったからな……。
居間へ移動して、こたつの電源を入れた。
なんだかとても、静か……。
"みわ! コタツコタツ!"
涼太はこたつ、好きだよね。
全く、イヌなんだかネコなんだか……。
足を入れても、何にもぶつからない。
当たり前か。ひとりなんだから、何かにぶつかる方がコワイ。
"みわの足が冷たいからわざと当ててんスよ、ほらこっち"
"1辺にひとりしか入っちゃいけないっていう決まりはないっスよ、くっつこ?"
涼太と楽しく過ごした事ばかり思い出し、思わずため息をついてしまっていた。
テレビは、ニュースくらいしか見ない。
今の時間なら、既に夕方のニュースは終わってしまっているだろう。
別に、つける必要もないか。
涼太は結構、テレビ見る方だからな……。
気付けば、これまで全く知らなかった芸能人や流行り物などの知識がついていた。
……やっぱり音が何もないのに耐えられなくて、テレビの電源を入れた。
静かだからとつけた筈なのに、今度はその音が煩わしくなって、音量をひたすら下げた。
そして、殆ど音が聞こえなくなってから、これなら消していた方がマシかと、結局テレビの電源は消した。
……何、やってるんだろう。
黒子くんに借りた小説の続きでも読もうかと開いてみたものの、文字が全く頭に入って来ない。
涼太。
涼太。
頭の中は涼太の事だけだ。
ちゃんと、謝りたい。
でも、話を聞いて貰えるかな。
"触るなよ!"
あんなこと、初めてだった。
ガラスで切った手よりも、振り払われた手の方がずっとジンジン痛い。