• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第60章 お互いの


「………………ん」

頭が痛い。
右手が痛い。

目を開けると、白い天井が視界に入る。
見た事のない景色。

「みわ、大丈夫?」

声のした方向を向くと、あきが心配そうにこちらを見ている。

「あき…………わたし……」

あれから、頭が真っ白になってからはどうしたのか全く記憶にない。

痛む右手を見ると、包帯が巻かれていた。

「切ったの? 凄い血だったから驚いたよ」

「う……ん、どうしたんだっけ……」

血……
ガラス……
ああ、カップが割れちゃったんだ……



……終わっちゃったんだ……



「……ちょっと、大丈夫?」

「うん、ちょっと頭がふわふわするだけ……ここ、どこ?」

「血がダラダラ流れてたから、怖くて救急病院に連れてきたのよ。大事に至らなくて良かったけど、貧血で倒れたもんだから休ませて貰ってんの」

救急病院。

「なんか電話で様子が変だったから見に行って良かったよ。あんな時間にひとりで外出たら危ないじゃん」

外に……ああ、出た。

もうどうでもいいやって、こんな私は消えちゃえばいいやって、そう思ったんだ。

「……黄瀬と喧嘩でもしたの?」

その名前に、一瞬息が詰まったかのように呼吸が苦しくなった。

「……」

「ああごめん、起き抜けに色々聞かれても落ち着いてないよね。今日はうちに泊まんなよ。黄瀬にも連絡しておくから」

最後の一言で血管が膨れ上がるかと思うほど胸が痛み、思わずあきに掴みかかっていた。

「涼太に……涼太には連絡しないで!」

「え……なんでよ。心配してるでしょ」

「涼太は、もう心配なんてしてないよ」

あんなに勝手なことをして、勝手に家を出て行った女なんて、どうでもいいはず。

心配など、するわけがない。

「何言ってんのよ」

「お願い……」

涙が止まらない。
さっきまでは、流れて来なかったのに。

さっきまでは、回路が停止してしまったかのように、感情が動かなくなっていた。

あのままの方が、楽だったかもしれない。

もう大好きなひとの口からあんな言葉、聞きたくない。

これ以上嫌われてしまったら、どうすればいいのかが分からない。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp