第59章 すれ違い
みわの淹れてくれたお茶をひと口飲んで、はぁと息をついた。
落ち着け。
あれだけ隠そうとしてるんだ、強い語調で責め立ててもかえって口を閉ざす結果になってしまうかも。
ちょっと、空気を変えよう。
そうしたら、言いにくいこともポロっと言ってくれるかもしれない。
コタツの上に、分厚い小説が3冊。
オレは本を読まないのでよく分からないけど。
「みわ、今これ読んでんの? 新しく買ったんだ?」
「あ、ううん、黒子くんに借りたんだよ」
「……は? 黒子っちに?」
なんだそれ、いつの間に。
「……いつ黒子っちに会ったの?」
身体中の血液が急激に冷えていくのがわかる。
オレの知らない間に、ふたりが会っていた?
さっきの、タバコ臭い男を想像した時よりも、ずっとずっと暗いところへ気持ちが落ちていく。
「えっと……いつだったかな、この間涼太がずぶ濡れで帰って来た時だよ」
聞いてない。
そんなの、聞いてない。
「なんで、オレに隠す必要があったんスか?」
なんで、なんて聞かなくても分かる。
後ろめたい事があるからだろ。
まさか、オレの知らない所でふたりが会ってたなんて知らなかった。
どこで会ったの。
何を、したの。
「隠してなんかないよ、涼太にはちゃんと話そうとしたんだけど……」
「隠してんじゃん。オレが今聞かなきゃ、みわからは言わなかっただろ」
「えっ……」
「隠してたんだろ」
「ち、違うってば……」
黒子っちも、今日会った時、そんな事一言も言ってなかった。
"神崎さんはお元気ですか?"
と聞かれただけだ。
そもそも、会ってたって、またメールでもして連絡を取ってたってこと?
オレには、必要最低限しかメールしてこないじゃないスか。
随分、オレとは違うじゃないスか。
なんだこれ、なんだこのドロドロした感情。
心臓からどんどん湧き上がって来て、手足の先、頭の中まで真っ黒になる。
止まらない。嫌な想像が止まらない。
イライラする。
黒子っちに告白されたの?
みわも黒子っちの事、気になってんの?
だから、オレに黙ってたんだ?
今日だって誰と会ってたの?
ねえ、オレはみわのなんなの。