第59章 すれ違い
おばあちゃんが、階段から落ちて救急車で運ばれた。
さりあさんの家で掃除をしている時に病院から電話が入って、そこからの事は殆ど記憶にない。
まだタバコの臭いが残るさりあさんの部屋を出て、病院に駆け付けたんだと思う。
真っ白になった頭で、涼太に助けを求めようとしてしまったけれど、涼太は今日、皆と楽しい時間を過ごしているはず。
こんな事を知ったら、絶対に切り上げて帰って来てしまう。
言えなかった。
そもそも、昔の仲間水入らずで過ごしてほしいと思って、あきと会うと嘘をついたんだ。
台無しにはしたくなかったから。
今日は結局、1日入院準備でバタバタと過ごしてしまった。
病室で寝ていたおばあちゃんは顔色が悪かったけど、命に関わるような状態ではなかった。
ただ、大腿骨を骨折してしまい手術をしたため、暫くは入院とリハビリ。
退院まで長くて3ヶ月。
更に、状況によっては今後、杖が必要な生活になってしまうかもしれないという事だった。
おばあちゃんを支えなければ。
暫くは足が使えない生活。
そうなると、こうして離れて暮らしている場合じゃない。
更に、その後杖を使っての生活となれば、誰かの手助けが絶対に必要だ。
涼太と暮らしていられるのもあとほんの僅かだと、認めたくなかった。
まだ、涼太に言いたくなかった。
私が嘘をついていた理由を涼太が知ったら、絶対に自分を責めてしまうと思って。
それに、今話したら、不安で泣いてしまいそうで……。
余計な心配をかけたくない。
でも、ちゃんと言わなきゃならないって、わかってる。
拗らせるくらいなら、きちんと話そう。
そう思っていたけれど、話がどんどんおかしな方向に。
やっぱり、嘘は怖い。
どんどんどんどん、嘘を隠すための嘘で塗り固められてしまう。
でも、涼太のこの目、何かに気づいている目だ。
あきに会うなんて言って、実は横浜になんて行ってないこと、多分バレてる。
涼太、来て欲しいってあんなに言ってくれていたもんね。
でも、黒子くんから帝光時代の話を聞いていたから、絶対に今日は邪魔したくなかったんだよ。
ごめんね、涼太。